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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード11

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EP11-20 - 家族と出会えて

「それで、肝心の空間魔法についてはどうなんだ?」


 話の内容はイベント当日の警備の話から、フィニティの魔法の進捗具合についてに変わる。イベントまでまだ時間はあるが、どの程度習得が進んでいるのだろうか。皆が心配そうにフィニティを見つめる中、話を振られた本人は得意げに息を漏らしていた。


「ふふふ、毎晩じっちゃんにみっちり教えられてますからね。それはもうバッチリですよ」

「ほー。随分と自信満々じゃないか」


 話を振ったハジメを含め、周囲の者が感嘆の声を漏らす。フィニティは更に胸を張り、調子に乗った様子で話を続けた。


「なんなら練習の成果を見せてあげますよ!」

「フィー、やめなさい」

「あだっ」


 調子に乗っている孫娘の頭を軽く叩くゲシハー。じゃれ合いの延長に見えるが、ゲシハーは屈んでフィニティと視線を合わせる。その顔には普段よりも深い皺が刻まれていた。


「新しい力を身に着けたとして、それを見せびらかすような振る舞いは感心せんな」

「……ごめん」

「力は誇示するためのものではないのじゃぞ。前にも言ったじゃろう。力を持つということは、その力の意味を考えなければないということじゃと」

「はい……」


 叱られたフィニティは肩をすぼめ、申し訳なさそうに顔を下げた。重力に引っ張られて髪が下を向く。影ができた表情は、とても深く反省しているように見えた。


「わかればよい。お前は聡い子じゃ。きっとその力を良い方向に使いこなせることじゃろう」

「うん、気を付ける!」


 祖父に頭を撫でられたフィニティは、顔を上げてパッと明るい表情を見せる。

 それにしても、とエリーたちは思った。調子に乗るフィニティも、こうやって色々な表情を見せるフィニティもあまり見たことがない。別にフィニティは感情に乏しい性格をしているわけではないが、これまでの彼女との学校生活を思い出すと、なんというか、普段は歳の割にもっと落ち着いており、あまり落ち込んだような表情を見せることがなかったような気がする。

 しかし、よく考えると彼女がそうなった理由もわかる気がした。ようやく彼女は家族に出会えたのだ。彼女から直接寂しいという気持ちを吐露したことはないが、恐らく無意識のうちに寂しさを覚えていたのだろう。そして今、大好きな家族から久しぶりに魔法を教わることができて嬉しいのだ。そんな幸せを掴むことができたフィニティを喜ばしく思う。


「……えっ、皆さん何ですかその生暖かい表情は」


 親心のような気持ちを抱いた友人一同は、ニヤニヤとした締まりの悪い顔でフィニティを見守っていた。見たことのない表情で見つめられ、フィニティは若干引いた様子で祖父の背後に身を隠すことにした。

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