EP11-19 - イベントは噴水広場で
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「へー。こんなところがあったんですね」
数日後、フィニティ達古代魔法研究会一同、そしてゲシハーとスーンはイベントを開催する予定の広場へと下見に来ていた。その場所というのは、エハキガの街中にある噴水広場だった。広場の中心にある噴水には水の魔法が使われており、キラキラとした水が絶え間なく噴き出ている。
広場は数百人ほど入ることができそうなほどの大きさであり、端に立つと反対側に居る人物が豆粒以下のサイズでしか見えなくなる。今日は特にイベントがなく、憩いの場であるこの広場には市民たちが散歩やピクニックに利用していた。
「普段からイベントが行われているこの場所ならば、会場の設営や警備の配置も楽にできるだろう」
スーンは普段通りの落ち着いた口調でそう言った。このような規模の公共施設を借りるには複雑な手続きが必要だっただろう。しかし、その苦労を見せないのは流石大人だと言える。
「噴水の前にステージを用意し、そこにフィニティを立たせるつもりだ。そうすれば嫌でも目立つ。ドアンドも見逃すことはないだろう」
「はぁ」
当の本人は架空のステージを想定しているのか、噴水の方を見て気の抜けた返事をする。
「私たちはどうするのですか?」
「イベントのサポートに回ってもらうことになるだろうな。客の案内や裏方、トラブル対応などをしてもらうことになるはずだ」
「サポート、ですか」
「不服か?」
残念そうなエリーの声。本当はもっとやりたい役割があるとでも言いたげな様子だった。
「いえ、そんな……」
「不満も不満じゃろうなー」
エリーの言葉を遮り、彼女の肩に手を回したのはリーバだった。自分の父親であり、憧れであるスーンには言いづらいものもあるはずだ。それをサポートするのは仲間である自分だと考えていた。
「大切な友人は自分の手で守りたい、そう思うのは当然のことじゃろ。理事長殿」
「理解はできないが、共感はできないな。警備の仕事を生業としている者に任せた方が適任だ」
「それを言うなら設営の方もプロに任せた方が適任じゃろ? ただの一般人であるワシらは、好きに動かせてもらった方がより良い結果になりそうな気がするがのー」
「生意気だな」
「生まれつきじゃて」
低い声でスーンは言う。しかし、表情はどこか柔らかい。自分に意見をするこの生徒を面白がるような顔だった。
「わかった。許可しよう。だが、各々が決めた役割は果たしてもらうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
エリーは先ほどとは打って変わって笑顔を浮かべ、勢いよく頭を下げる。そしてリーバの方へ顔を向け、口の動きで感謝を伝えるのだった。




