EP11-18 - 未来を思って
「あと決めなければならないのは、当日の流れくらいでしょうか」
話し合いは続き、決めておくべき事項は当日についての話くらいとなっていた。
「とはいえ、実際の会場を見ないと決められないものはあると思いますが」
「そうじゃのう。じゃが、ある程度の流れは今の時点で決められそうじゃ」
ゲシハーは当日の流れとして、フィニティを目立つ位置に配置して時間が来たら空間魔法を唱えている様子を観客に見せつけ、どのような効果の魔法なのかを説明するという。観客から何かしら質問が来たらフィニティ、またはイベントの主催者であるスーンが回答し、これらの魔法を学べるのはマージ・モンドのみであるという告知を行う。ちなみに、空間魔法についてはゲシハーがスーンへレクチャをする予定となっていた。
「勿論、スーン殿の安全もワシらが保障しますぞ」
「そうですね。それは保障して貰わなければ協力できません」
スーンは笑いながらそう言った。ゲシハーは具体的に何をするかを言ったわけではないが、彼には命を任せられるような安心感が感じられた。これが経験の差だろうか。
「スーン殿」
と、ゲシハーはこれまでと異なる低い声でスーンの名を呼ぶ。彼は立ち上がり、窓の近くへと歩くと、その先に広がる校庭をじっと見ていた。視線の先には校庭で魔法の練習をしている生徒たちがいた。
「この時代は素晴らしいですな。魔法によって傷つく者もおらず、魔法を人のために使っておる」
「そうですね。わたしは魔法によって人々の暮らしを良くしたいと思っていますし、そのために才能のある人材には最大限のサポートをしたいと思っています」
スーンがマージ・モンドを設立したのは、『高い魔法力を持つ優秀な魔法使いを輩出する』という目的のためだ。その目的の背景には、世にいる魔法使いの能力がピンからキリまで様々であり、自分が最高峰の魔法学校を経営することで、『マージ・モンドを卒業した優秀な魔法使い』という人材を輩出することを考えたためである。そうして優秀な魔法使いを多数輩出することで、魔法使い界隈の全体のレベルをあげるという目論見があった。
「この時代はワシの理想でもあります。そのために、全力でドアンドの行動を阻止しなければなりません」
「……そうですね。特に貴方たちの話を聞いていると、強くそう思います」
スーンはゲシハーの言葉に頷き、未来を思う。この世界のためにも、今回の作戦は成功させなければならない。二人は目を合わせて心と心でわかり合うと、話し合いを終えて談笑をし始めるのであった。




