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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード11

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EP11-15 - 成長する孫娘

 夕飯を食べて歯を磨き、フィニティたちは早々に寝床へと入った。カーテンで窓を覆い、月明かりが入らなくなると、いよいよ部屋が真っ暗闇になる。目を開けているのに隣で眠る家族の姿すら見えない小屋の中で、フィニティ達は明日に備えて眠ろうとする。


「久々にじっちゃんとばっちゃんとご飯を食べれて嬉しかったなー」

「あら、そう言ってくれると嬉しいねえ」


 本日料理を作ってくれたサオエルが、嬉しそうな声色でそう言った。久しぶりに食べることができたおふくろの味は、フィニティの心に安心感をもたらした。

 しかし、フィニティは心の中で呟いた。一緒に食べることができて嬉しかったけど、味が薄くてあまり美味しくはなかったな、と。そういえばセンが初めてこの小屋へやって来たとき、料理を振舞ったら作り笑顔を浮かべていたが、その理由が今になってわかった気がした。


「ばっちゃんは明日、一人で留守番してるの?」

「そうねぇ。小屋の細かいところの掃除もしないといけないしねぇ」

「そっかぁ」

「なんじゃフィー。婆さんに何か頼みたいことでもあったのかえ?」

「そう言うわけじゃないけど」


 せっかくだから三人で学校に行き、お昼ご飯を食べたかっただけだった。あそこのご飯は美味しいので、せっかくだから皆で食べて感想を話したいと思っていたのだ。

 しかし、予定を変えて来てもらうほどのことでもない。このまま三人で過ごしていれば、いずれ皆で学校へ行く機会だってあるだろう。その日を夢見て、明日からは魔法の勉強を頑張ろう。フィニティはそう考え、布団を頭まで被る。


「フィー?」

「……ぐぅ」

「寝てしまったのか。相変わらず寝つきがいいのう」


 頭まで覆った布団の中から、大きな寝息が聞こえる。この寝つきの良さは生来のものであるが、今日はもしかしたら疲れがたまっていたのかもしれない。


「フィー、わたしに何かしてほしいことでもあったのかしらねぇ」

「どうじゃろうな。昔のフィーだったら、ワシらにしてほしいことがあれば素直に言っていたと思うが」

「きっと学校で過ごす中で、相手のことを思いやる気持ちも身に着いたんじゃないかねぇ」

「確かに、そうかもしれんのう」


 自分たちが不在の中、気づけば我が孫は一人で成長を重ねていた。嬉しいような寂しいような。自分の手から離れていく少女の寝顔を見ようと、祖父母の二人は布団を少しだけ捲ってみることにした。そこにいたのは、今までと変わらぬあどけない顔で眠っている孫娘の姿だった。その可愛らしい笑顔は、暗闇の中でもしっかりと見えたような気がした。


「……」

「やっぱり、フィーはフィーじゃのう」

「そうねぇ。立派になっても、フィーはフィーよね」

「うむ」


 この子の成長を見届けるためにも、絶対にドアンドの野望は阻止しないといけない。老人二人は改めて覚悟を決めて、自分たちも布団に入って眠りにつくのであった。

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