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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード11

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EP11-13 - 久しぶりの我が家

「この小屋に来るのも久しぶりだなぁ」


 ゲシハーが創り出した転移門を潜り、フィニティたちフレイン一家はかつて自分たちが過ごしていた小屋へと戻って来た。そしてフィニティは約半年ぶりに見たかつての住処を見てそう呟いた。


「久しぶり……。そうか、ワシらは封印されている間の記憶がないからそうは思わんが、フィーにとってはそんな感覚なのじゃな」

「うん。ずっと学校にいたからね」

「フィーが学校だなんて、なんだか不思議な感じね」


 祖父母から見た孫娘は、ずっとこの山小屋で過ごしており、それ以外の景色を知らない女の子であった。自分たちの素性が特殊である以上、社会との接触は慎重にならざるを得なかったのだ。

 しかし、彼女はこの山を下りて社会と交わった。他人と一緒に日々を過ごし、縁を作り、関係性を深めていた。彼女に自分たちのちゃんと話していなかったことは結果的に良い方向に働いたのかもしれない。もしも古代や生まれの話をフィニティ自身にも伝えていたら、彼女は今のような関係性を作ることはできなかった可能性が高い。


「それにしても、あたしのお父さんとお母さんがいたなんてね」

「あ……」


 そうだ。話していなかったといえば、彼女の両親のことも真実を話していなかった。彼女は捨て子であり、偶々自分たちが彼女を見つけ、保護をしたとフィニティには話していた。これはフィニティが自分の母親であるオコサが死んだことを覚えていなかったため吐いた嘘であった。恐らくだが母親が死んだことに強い衝撃を受け、幼いながらに彼女の脳はその衝撃の瞬間を消してしまったのだろう。その結果、彼女はこの時代に来るまでの記憶のことをちゃんと覚えていなかった。

 それだけではない。彼女の生まれや彼女の体もかなり特殊なものだ。自分は誰かの複製品であること、そして普通の人間とはまったく違う体をしていること。その話をした時の彼女はずっと黙っていたが、酷い衝撃を受けてしまったのではないだろうか。


「その、フィー。大丈夫?」

「え、何が?」

「あなたの生まれのことよ。その、オリジナルのフィニティがいるということとか……」

「うーん」


 フィニティは腕を組み、口を尖らせて唸っていた。しかしその声色は悩みや苦しみを抱えたものではない。彼女が考えを巡らせる中で出てしまった息のようなものだった。


「そんなに気にしていないかなぁ」

「そう? 強がったりしてない?」

「だって、あたしは――」

「おぉい二人とも何してるんじゃ。早く小屋の掃除を手伝っとくれー!」


 少女の言葉を遮ったのは、先に小屋へ入っていた祖父の呼びかけだった。少女は最後まで言葉を言わずに、祖父の下へと駆け寄っていった。

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