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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード11

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EP11-7 - 民衆への付加価値

「だめだぁ」


 シャータが椅子に座ったまま項垂れる。数十分ほど考え込んでいたものの、良い策が思いついた者は誰もいなかった。


「古代魔法が使える人物を公表すると、注目を集めるというだけではなくなるだろうな」

「ええ。研究機関だけではなく、その力を悪用しようと考える組織も出てくるでしょうね」


 スーンとセンの会話のやり取りは、以前リーバとエリーがフィニティを守ると決めた時に話し合っていた時の内容と似たようなものだった。世間にとっては古代魔法自体が珍しいものだ。その詳細を知る人物が現れたというのであれば、研究者たちが黙っていないだろう。それだけでなく、未知の力を利用しようとする不埒な輩だって現れる可能性が高い。そこを考慮して作戦を練ろうとすると、中々良い案が浮かばなかった。


「古代魔法という単語や、あまり強大な魔法をアピールすることなくドアンドをおびき寄せる、ねぇ」

「……無理じゃないか?」


 民衆の混乱を防ぎつつ、世間に浸透する噂が流れるほどの興味を持ってもらうこと。ドアンドをおびき寄せるための餌を用意するには高いハードルがあった。


「古代魔法の名を出さず、ワシの名前だけを出すだけで解決はできんかの?」

「それでドアンドのところまで噂が届くとは思えませんね。やはり何かしらの付加価値がないと……」


 ここにいる皆はゲシハーたちの凄さを知っているが、民衆には関係ない。彼やサオエルが現れたとしても、謎の老人が現れたとしか思われないだろう。あくまで彼らが古代魔法に精通しているということを伝えなければ、世間に興味は持たれない。


「価値かぁ。難しいなぁ」


 現代において彼らの最大の価値は、言ってしまえば古代魔法が扱えることだ。その単語を直接出さずに民衆へ興味を持ってもらえるような価値を伝えるのは中々に難しい。

 そこで、ある人物がふと思った。逆に考えてみればどうだろう。ゲシハーたちの価値を世間に伝えて餌にするのではなく、世間が反応しそうな内容を餌にするのだ。そう、例えば……。


「マージ・モンドに所属する者が力を示す、となれば世間一般の魔法使いの方たちも耳を傾けるのではないのですか?」


 エリーが出した提案。それは今抱えている課題の解決への一歩となるものだった。彼女の父親であるスーンは、娘の提案に頷いて言葉を紡ぐ。


「確かに、我が校の知名度を考慮すると、そこに所属している魔法使いが何かしらの力を見せるとなればそれなりの人は集まるだろうな」

「その方向性で考えてみましょう。上手くいけばさっきの条件を満たしつつ、ドアンドをおびき寄せることができるかもしれません」


 マージ・モンドの知名度を生かす方向性で、一同は改めて餌の撒き方について議論することにした。正解までの道のりが見えてきた。言葉には出さないが、誰もがそう思い始めていた。

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