EP11-5 - 押してダメなら引いてみな
「ドアンドのいそうな場所かぁ」
ドアンドの目的はゲシハーの本に書かれている魔法である可能性がある。だとすると目的の本は既に奪われており、すぐにでも彼の居場所を突き止めなければ、強力な魔法を覚えられてしまうかもしれない。そのため彼の居場所を推理する一同であったが、良い答えは中々出てこなかった。
「ゲシハーさん達が封印された後、彼が姿を見せたのは三回」
「エリーの前に現れた時、エリーの暴走をフィニティが止めた時、そして本が奪われた時だね」
エリーとシャータは指を折って過去の出来事を思い返す。あとは直接姿を見ていないが、実技魔法研究会の魔法石による水の幻の時くらいか。
過去に実技魔法研究会とのいざこざでドアンドの幻を見た時は、フィニティに何かをすることが目的だと思っていた。だから彼はフィニティの周りに現れるのだと。しかし、目的がフィニティではなく本だった以上、もう姿を見せに来ることもないはずだ。
一応これまでにドアンドが現れた時の共通点を探そうとするが、首を捻っても唸り声をあげても思いつかない。というのも、彼はいつの間にか現れ、気が付いたら姿を消している。痕跡のようなものを残したこともない。
「……行き詰ってしまったね」
そう言ってセンは溜息を吐く。ドアンドが現れる条件も、彼が居そうな場所の手がかりもない。自分たちには情報が足りていないことを実感する一同だった。
「いっそのこと、奴をおびき出してみるかの」
そんな中、独り言のようにボソッと呟いたのはリーバだった。今まで誰も出すことのなかったその案に、彼女の幼馴染である生徒会長が反応する。
「おびき出してみるって、どうやってだい?」
「あー、すまん。言ってみただけじゃ。具体的なアイデアはなーんも出ておらん」
リーバは手を横に広げた。どうやら今の自分には良い作戦が思いついていないことのアピールらしい。
「おびき出すなんてできるのか? 奴の目的は本なんだろ」
「だから、言ってみただけだと言ったじゃろ。ドアンドをおびき寄せるための餌など持っておらんよ」
「餌、ねぇ」
生徒会長は先ほどから何かが引っかかっている様子だった。こちらから探すための手がかりがない以上、向こうから来てもらうよう作戦を立てるのは理にかなっていると言えるはずだ。そのための餌、ドアンドが気になってしまうようなもの。今の自分たちはそれを持っていないのだろうか。
ドアンドの目的はゲシハーの書いた本だった。いや、正確に言うと本に書かれた魔法だ。その魔法はゲシハーのみが知っているもので、そのゲシハーはここにいて……。
「……あっ」
「どうしたの。生徒会長」
生徒会長は自分たちが持っている餌に気が付く。これを上手く利用すれば、ドアンドと接触することはできるかもしれない。
会長は自分が思いついたことを皆に話し、反応を見る。より詳しい作戦を練るために。




