EP11-4 - 実はワシはすごい人でね
現代へとやって来たドアンド、その目標は自分たちが扱うことのできる古代魔法かもしれない。ゲシハーはそう言った。直前にハジメとシャータの二人が、古代魔法のことならば古代で探求したほうが良いのではないか、と言ったのにも関わらずだ。
「自分で言うのは少しこそばゆいが、ワシは過去の時代において賢人と称されるほど知識を有している人物じゃった。フィーへ残した本に書いた魔法も、一般的に知られているものではない」
「特別な魔法、ということかの?」
「その通りじゃ、魔女のお嬢さん。本に書いたもの以外にも、一部の人間にしか知られていない魔法をワシは知っておる」
「へー。じっちゃんってすごかったんだね」
孫に褒められたお爺ちゃんはどこか嬉しそうに口角を上げる。それに気が付いたのは長年彼と連れ添ってきた伴侶くらいであったが。
「つまり、ドアンドは爺さんしか扱えない魔法を探していたってことか?」
「その可能性はある。何の魔法かはわからんがの」
ドアンドは一部の人間にしか扱えない高度な魔法を探し、その結果、いなくなったゲシハー達の知識が必要になった。それがゲシハーの考えらしい。
確かに、一部の人間しか使えない魔法があるとして、その一部というのが自分の知人にいた場合、その人を探した方が手っ取り早いと言えるだろう。
「そうなると、急いで彼の居場所を突き止めた方が良いのではないですか?」
おずおずと手を上げたエリーが恐る恐るといった様子でそう言った。
「フィニティから奪った本に、ドアンドさんの目的の魔法が書かれているかもしれないってことですよね?」
「うむ、その通りじゃ。ただこの議題を後回しにしたのも理由があっての」
ゲシハーは腕を組み、少し考え込む様子を見せてから口を紡ぐ。
「ドアンドがどこにおるのか、全く持って見当がつかないのじゃ」
「それは、まぁ……」
これまで黒いコートの人物と呼んでいたドアンドは、神出鬼没の謎多き人物であった。こちらが予想して彼が現れたことなどなく、逆にこちらが意図していないときに彼は必ず現れる。そんな彼の居場所を知っている人物は、この場に一人もいなかった。
「ゲシハー殿。貴方は二年前にドアンドが現れた時に魔法力を察知できたと言いましたね。それは行えないんですか?」
スーンはこれまでの記憶を頼りに、老爺にそう問いかける。彼は確かに、ドアンドが現れた時にその特別な魔法力を検知できたと言っていた。それができれば、今この時間においてもドアンドの居場所がわかるはずだ。だが、ゲシハーは首を横に振る。
「残念ながら、今は彼の魔法力を検知できぬのじゃ。ワシにも理由はわからんがな」
ゲシハーが言うには、二年前に感じたような特別な魔法力を世界のどこにも感じないらしい。申し訳ないと彼は言い、改めて一同はドアンドの居場所を突き止めるための議論を進めるのであった。




