EP11-3 - 時空を超えた理由
「さて、揃ったな」
午後の授業も終わり、放課後の鐘が鳴った後。
センとスーン、ゲシハーとサオエル、古代魔法研究会のメンバーと生徒会長が一同に集まり、議論を始めようとそれぞれが椅子に座った。
「それではドアンドを探すため、そして何を目的なのかを考えるための議論を始めようと思う」
「うむ、それではよろしく頼むぞ。皆」
議論開始の宣言をスーンが行い、ゲシハーの言葉に皆が頷く。
ドアンドの居場所、そしてこの時代にやって来た彼の目的。この二つが今、ここにいるメンバーがわからないことであり、知らなければならないことだ。
「まずは目的の方から考えようと思うが……」
「はいはいはい」
ファシリテーターを務めるスーンの言葉に対して真っ先に手を上げた生徒がいた。シャータだ。
「何だ、シャータ・スチャン。今は真面目な議論をしようとしているのだが」
「アタシだって真面目なんだけど。ねぇ、目的ってあの奪われた本だったりしない?」
奪われた本。彼女が言うそれは、ゲシハーがフィニティに宛てて綴ったものだ。その本の中には、強力な古代魔法の使い方が記されているという。
「だが、その本は爺さんがこの時代に来てから書いたものなんだろ? だったらドアンドは本の存在を知らないんじゃないか」
ゲシハーを爺さん呼ばわりできるのはハジメくらいなものだろう。そのハジメが言ったことは辻褄が合っているはずだ。シャータは自らの発言の矛盾に気づき、項垂れるような仕草をする。
「気になさるな。お嬢さん。貴女の言ったことは間違っていないかもしれぬ」
「……そう、かな?」
「うむ。未来にやって来た理由がワシら三人のうち誰かを追ってきたとするならば、それは何かしらの古代魔法を探しに来たのかもしれぬ」
確かに、ゲシハーとサオエルは様々な古代魔法を扱うことができる。それは彼らに強大な魔法力があり、かつ天性の才能を持っているためだ。その彼らが扱える魔法を追って、この時代へとやって来た可能性はあるかもしれない。
しかし、生徒達には老爺の意見の中に引っかかる部分があった。
「古代魔法なら、ドアンドがいたはずの古代で探せばよかったんじゃないか?」
「確かに、わざわざゲシハーさん達を探す必要はないよね」
ハジメとシャータが言ったように、わざわざ時空を超える必要などあるだろうか。古代で扱われている魔法なら、その時代で研究が進んでいるはずだ。未来で文明が滅びたとはいえ、そんな未来はその時代を過ごしている人にはわからないはずだ。もう一度考えても、わざわざ時空を超える必要はない。
「いや」
そう生徒たちは考えていたのだが、老爺は首を横に振った。
「やはりワシらの魔法を探しに来た可能性は高いかもしれんのう」




