EP10-14 - 今、現在に目を向けて
「そうしてワシらが過ごしていた頃の魔法文化は廃れたと知り、ワシらは自分たちの魔法をフィニティに伝えつつ山の中で過ごしていったのじゃ」
ゲシハーは図書館などの様々な施設で情報を集めた結果、過去に肯定派と議論していた魔法以外の魔法もこの時代では使われていないことを知った。例えば、彼らがこの時代へやって来るために使用した時間を超える時空魔法。場所から場所へと移動するための転移魔法なども全て使われていなかった。
そこで、ゲシハーは日々を平穏に過ごしながらも自分たちが抱えた技術をフィニティに継承し始めたという。
「やっぱり、昔じっちゃんが言っていた普通じゃない魔法って古代魔法のことだったんだね」
それはゲシハーが過去にフィニティへ話したことだ。自分たちがいなくなっても覚えておいてほしいということ。その昔話はつい先日、古代魔法研究会の皆の前で話したばかりだった。
「覚えていてくれたのじゃな。……さて、長くなったが、以上がこの時代までにワシらを襲った出来事の全てじゃ」
人の手に余るような魔法が発見され。
それについての議論が行われるも答えは出ず。
徐々に秩序は乱されて否定派は暴力によって排除されそうになり。
時空を超えて逃亡しようとしたところを暴走したフィニティの父親によって母親が殺された。フレイン一家に起きたのは、このような出来事だった。
想像するだけでも悲惨なことが伝わってくる。サオエルが複製魔法の失敗例に触れていたが、もっと悲しい事件をこの老夫婦たちは見てきたはずだ。
「ありがとうございます。語るにも辛いこともあったでしょう」
「気にしないでおくれ。全ては過去に起きたことじゃ。ワシらは未来に、今に目を向けねばなるまい」
過去を知ったスーンの言葉に対し、ゲシハーはそう答えた。自らが言った希望ある言葉に反して、彼の表情は暗く、沈んでいる。
「今……。そうだ、ゲシハーさんたちに聞きたいことがありまして」
「む?」
手を上げて質問をしたのは、先ほどまで静かにしていた生徒会長だった。彼はいつもとは異なり、少々緊張した様子で発言をし始める。
「黒いコートの人物、と我々が呼んでいる人物がいるのですが、ゲシハーさんたちはご存じでしょうか。奴もまた古代魔法を使っているのですが」
「生徒会長殿、流石にその質問に答えることは不可能じゃろう。ゲシハー殿たちはコートの人物には会っていないのじゃぞ」
「いや、知っておる」
リーバの予想に反し、ゲシハーは例の黒コートの人物を認知していた。その理由は一同の想像を超えるものだった。
「ワシらはそやつのせいであの玉に封じられていたのじゃからな」




