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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード2

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EP2-12 - 魔法の学校に風が吹く

「……」

「あれ、これいつまでやればいいんですか」


 自分を警戒しているエリーの視線に気が付かず、フィニティはセンに質問をした。もう下ろしていいぞ、と若干興奮した様子のセンがフィニティに告げる。


「あぁ疲れた」


 かざした手を下ろし、ふぅ、とフィニティは大きな息を吐く。しかし、そんな疲れた様子の彼女を休ませない男がいた。彼女をこの学校まで連れてきた男だ。


「すごいじゃないかフィニティ! 測定器の石を一番上まで浮かせることができる人間なんて数えるほどしかいないんだぞ!」

「そうなんですか?」

「そうなんだよ!」


 興奮のあまりか、センは先ほどまで魔法陣を出していたフィニティの手を強く握る。詳しいことは理解しきれていないものの、褒められていることはわかったフィニティはだらしない顔でにへらと笑っていた。

 ともかく、彼女の魔力はマージ・モンドへ入学するにあたって十分なものだ。ここまで強大な魔力を持っているのであれば特待生として学費を免除して入学できるはずであり、入学さえできれば今後はこの学校の女子寮を使うことができる。そうすれば、フィニティはこの街で問題なく過ごすことができる。なにもかもがうまくいった、センは心の中でガッツポーズをした。

 ならば善は急げだ。もう一度教員室に戻り、転入の手続きをしようとするセンであったが、それを引き留めたのはエリーだった。


「どうした、エリー?」

「転入の手続きをするのはいいですけど、もう遅いですよ。先にこの子をどこかで休ませた方が良いのではないですか?」


 時刻は既に十九時を回っており、窓の外では月と街灯がこのエハキガの街を照らしている。もう子供は寝る時間だと言えるだろう。

 それにこの二人は今日山を下りてきているのだ。成人男性であるセンはともかく、まだ幼いフィニティが体力の限界を迎えるのは時間の問題だろう。彼女を休めるところまで連れていく方が先決だ、というエリーの意見は至極真っ当なものであった。

 

「確かにそうだな。フィニティ、今日は僕の部屋に泊まっていってくれ」

「……え?」


 素っ頓狂な声を上げるエリー。


「どうした?」

「いや、え、チャーティー先生がこの子と過ごすんですか?」

「それがどうかしたのか?」


 家族関係でもないのに、今後学校で生徒となる者が、教師と二人が同じ部屋で過ごすというのは大丈夫な行為なのだろうか。しかも異なる性別で。

 まだ入学前とはいえ、それが色々と邪推されてもおかしくない行為だと思うのは考えすぎだろうか。少なくともエリーは疑問に思う。


「……今日のところは、私の部屋に彼女を泊めます。この子、見る限り着替えとか持ってなさそうですし」

「そうか? ありがとうエリー。助かるよ」


 多分、きっと、恐らく大丈夫だとは思うが、万が一このことが原因でセンがこの学校を辞めることになったら目も当てられない。

 あまりこの子に深く関わりたくはないが、ここまで来たら乗り掛かった舟だ。そう考えたエリーは、今日のところはフィニティを引き取ることを決めた。

 エリーの話を聞いたセンは、今度こそと息巻いて教員室へ戻っていった。実験室に残された二人の間に気まずい沈黙が流れる。なんとか話題を作り出そうとしたフィニティは、先ほどまで読んでいた本をエリーに手渡した。


「あの、これ」

「あぁ、ありがとうございます。ちゃんと元の場所に返却しなければなりませんね」


 そう言ってエリーは本を受け取ると、表紙を見て「なんで古代魔法の本がここにあるのよ……」と小さくぼやいた。


「ではこの本を返してから部屋へ向かいましょうか。フィニティ、改めてよろしくお願いします」

「あ、はい。よろしくお願いします」


 差し出された手を握るフィニティ。二人はもう一度手を握って実験室を後にした。

ようやくあらすじの部分までたどり着きました。

次回より新エピソードとなります。

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