EP10-7 - 少女が生まれた裏側
ここにいるゲシハーとサオエル、そしてフィニティ。彼らは古代からやってきた。その中でフィニティは古代魔法によって創られた人間であり、魔核というものがないと生きていられない。ここまでの話をまとめると、どうやらそういうことらしい。彼らの出自がわかったところで、老人は次の説明に移行する。
「さて、次は何故ワシらがこの時代へやって来たのか。それを話さねばならんのう」
どのような理由があって古代から時空を超えて今の時代へとやってきたのか。ゲシハーはそのことについて語り始める。
「フィニティを生み出したドアンドじゃが、その後はこれまで以上に古代魔法に対する肯定的な意見を発していた。そして肯定派の中でも特に過激な発言をするようになっていったのじゃ」
「過激……ですか」
「うむ。あの時の彼は確かこう言っていた」
ゲシハーは少しだけ過去を思い出すような仕草を見せると、少しだけ声色をそのドアンドとやらに寄せてこう言った。
「……『命の複製や生成によって我々人類の最大の恐怖である死を乗り越えることができる。これによって人類は益々発展していくだろう。どうやら否定派は我々人類の発展を邪魔したいようだ』とな」
人類の発展の邪魔。それは拡大解釈というものだろう。ここにいるゲシハーもサオエルも他の人間のことを考えていないとは思えない。
「しかし、過激な発言というものは人に大きな影響を与えるものでのう。肯定派の中でも命の複製や生成といった魔法は否定していた者も、やがてドアンドの意見に賛同するようになっていった」
「倫理に反するような魔法でも使っていくべき、という意見ですね」
「そうじゃ。人類の発展のためという大義名分を手にした彼らは、ドアンドと同様に人間を複製する魔法を使用するなど、あらゆる魔法を習得し使って行った。じゃが……」
ゲシハーとサオエルは再度悲し気な表情を浮かべた。その時のことを思い出すだけでも気分が悪くなる、とでも言いたげな悲痛な顔だった。
「ドアンドがフィーの命を複製できたのは彼の魔法力が高いからじゃ。魔法力の低い人間が複製魔法を使うと、生み出された命は人とは言い難い形状をしていた」
「……体の一部が欠損していたり、ね。酷いものは肉塊としか言いようがない形をしていたわ」
話を聞いたフィニティは自分の手足を見た。そこには他の人物と同様に両手両足が存在し、五本の指に力を入れると自分の意思通りに動く。この手足が存在しない可能性があったのかと思うと、少しだけぞっとした。




