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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード9

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EP9-19 - フィニティが死んだ

 フィニティが亡くなった。医者はそう言った。エリーはワンワンと泣き叫び、スーンは黙ってフィニティの方を見ている。

 そんな馬鹿な。フィニティが倒れてからまだ三日も経っていない。医者も二週間は持つ可能性があると言っていたではないか――、そうセンは思っていた。

 しかし、同時にこうも言っていたことを思い出した。魔臓や心臓を治す手段は見つかっていない、覚悟を決めろと。それに、持って二週間ということは、それより早く亡くなる可能性が高いということだ。当たり前のことに、何故か今になって気が付いた。

 ともかく、フィニティは死んだ。もう二度と喋ることはないし、動くこともない。

 こうなる可能性はあった。そのことはここにいる誰しもが理解していた。だが、無意識のうちに考えないようにしていたのだ。自分たちが頑張れば、フィニティはきっと助かるはずだと、そう思うことでフィニティが死ぬと言う可能性を考えないようにしていた。


「あ、あぁ……」


 センはその場に崩れ落ち、床へ涙を落とす。自分と関わりさえしなければ、フィニティが死ぬことはなかったのだ。自分が山から彼女を連れてこなければ――。自分は本当に愚かな存在だったと、彼は自らを責め続けた。

 ゲシハ―とサオエルの二人にも申し訳ないことをした。愛する孫を死なせてしまったのは自分の責任だ。とにかく謝らなければと、センは赤くなった目で二人の方へと顔を向ける。

 すると、その二人は以外なことに顔色一つ変えていなかった。まるで目の前で起きていることが、なんとでもないとでも言うように。


「ふむ」


 ゲシハ―は足を動かし、フィニティの近くへとやって来る。彼はフィニティの体を触り、そして閉じられた少女の瞼を開けると、泣き崩れているセン達に対してとある質問を投げかけた。


「フィーが傷ついたのは、主に腹部でしたかな?」

「……えぇ」


 答えたのは誰だったか。意気消沈としている少年少女の中の誰かが震える声で返事をする。


「ならば……」


 ゲシハ―はぶつぶつと呟くと、自らの目に魔法をかける。それは過去にフィニティがエリーを助けるためにかけた改製魔法と類似しており、魔法がかかった彼の片目は銀色へと染まっていた。

 銀色の目で彼はフィニティの体を頭から足のつま先まで眺めると、そのまま手を翳して次の魔法を唱えた。


「『転移』。此方より彼方へ参らん」


 今度の魔法は、王都へやって来るための転移門を作る魔法と類似していた。そうして生み出された空色の魔法陣は光り輝くと、ゲシハ―の手に手のひら程度の小さな欠片が握られていた。それは宝石のように美しく、くすんだ赤色であった。

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