EP9-19 - 間に合わなかった?
「まさか、本当に王都へ着くとは……」
センに続いてリーバやハジメ、シャータと生徒会長、更に古学博物館の館長までもが転移門を潜り王都へとたどり着く。最後に門を作った当人であるゲシハ―とサオエルの二人がやってくると、老爺は魔法を唱えて転移門を閉じた。
「さて、フィーのいる病院まで案内してもらおうか」
「あ、はい。こちらです」
センが先導して皆を病院へと連れていく。館長は一同に着いていくか悩んだものの、今から博物館へと帰る手段がないことを考慮して彼らの後ろをついていくことにした。
そうして歩き始めてから約一時間弱。一同はフィニティが入院している病院へとたどり着く。既に日が変わっており、灯りが消えたその病院の扉を開くと、センたちはフィニティの部屋へと向かう。八人もいると目立ちそうなものだが、通路では誰ともすれ違わなかった。
「あった。この部屋でフィニティは療養しているはずです」
フィニティの名前が書かれた札を見て確信を得ると、センは病室の扉をノックする。先にエリーとスーンがやってきているはずだが、病室から返事は返ってこなかった。今日のところは宿屋で休んでいるのかと思い、返事のなかった扉を開けると、そこには三人の人物がベッドの周りを囲っていた。
「……スーン理事長、いらしたのですか。エリーと先生も」
「……」
「声がなかったから、てっきりいないものかと」
声をかけるセンだが、三人は振り向こうともしない。まるで何かに反応する気力すらないような、どんよりとした雰囲気を醸し出していた。
「あの、フィニティの祖父母を連れてきたんです。これでフィニティを治すことが――」
「先生」
エリーはセンの言葉を遮ると、足早にセンのもとへと歩き、その顔を見せた。涙と鼻水に塗れ、整った顔をぐしゃぐしゃに歪ませたその顔を。
「フィニティが……フィニティがぁ……!」
少女はワンワンと泣きじゃくり、センの胸元に顔をうずめた。何が起きたのかを聞こうにも、彼女が何かを話せるような状態ではないことは一目でわかる。困ったセンは残った二人に視線を送ると、エリーの代わりに医者がボソリと呟いた。
「亡くなった」
その言葉の意味を、一同はすぐに理解できなかった。いや、理解することを拒んだとでもいうべきだろうか。
「急に暴れ出した。鎮静剤を打ったのだが効果はなく、つい先ほど動かなくなり、そしてそのまま――亡くなった」




