EP9-18 - ようやく会えたあの人たち
「ゲシハ―とサオエルって、確か」
「フィニティの祖父母の名前、だったよな?」
やはりそうか、とセンは思った。
老爺と老婆の名乗った名前は聞き覚えのあるものだった。それはセン達が探していた人物であり、今まで影も形も見えなかった人物だ。そして、今フィニティに迫っている危機を救うことができる可能性を持つ人物ともいえる。
「ワシの名前を――いや、フィーを知っているのか?」
「フィー?」
「あぁすまん。フィニティのことじゃ。ワシらはフィーと呼んでいてな」
フィーとはフィニティの愛称のことらしい。そしてフィニティのことを語るということは、やはり彼らは目的の人物で間違いなさそうだ。
「それで、あなた方はフィニティのお爺さんとお婆さんで間違いないですね?」
「うむ。その通りじゃ。君たちは一体?」
「僕は彼女の通う学校の教師です。彼らは彼女の友人たちで……」
「学校? フィーが、学校?」
「えーっと、話すと長くなるんですが……」
そういえば、とセンは思い出す。彼らと一緒にいる時のフィニティはずっと山で暮らしていたのだった。ならばそこから何があったのかを説明する必要があるだろう。山小屋に一人で暮らしていたフィニティを学校へ誘ったセンが、今までに何が起きたのか、フィニティは今どうしているのかを二人に説明し始める。
話を聞いたゲシハ―とサオエルの二人は、ふむと頷いて天を見上げた。自分たちがいなくなってからフィニティに起きた出来事を聞いて、彼女の身を案じているようだった。
「そうか、フィーがそんな目に……」
「そうなんです。それで聞きたいのですが、貴方たちは治癒魔法を使えるのですか?」
センの質問に老人二人は答えない。はいでもいいえでもなく、ゲシハ―は口を開くとこう言った。
「治癒魔法、というものは君たちの言う古代魔法にも存在しない。恐らくフィーが別の魔法のことをそう言ったのだろう」
「別の魔法ですか?」
「うむ。とはいえ、フィーの体を治す魔法に心当たりはある。今すぐその病院へ向かおうと思うのだが、どこにあるか教えてくれるかね?」
「あ、でしたら王都への馬車を手配しましょう。もう夜遅いので、出発は明日の早朝となりそうですが……」
「ほう、王都か。ならば問題あるまい」
ゲシハ―の発言の意図がわからず、何が問題ないのかとセンが問おうとしたその時、既に老爺は手を前に出して魔法の詠唱をし始めた。
「『転移』。此処と彼方を繋ぐ門を作り出さん――結場門」
何の説明もなく魔法を唱えるゲシハ―。そうして光り輝いた魔法陣の跡には、銀色に光る、人一人が通れそうなくらいの大きさの門のようなものが現れていた。
「これは転移門と言ってのう。場所と場所を繋ぐ門なのじゃ。この門を潜れば王都へ着くことができる」
「は、はぁ」
本当にそんなことができるのかと、半信半疑の気持ちでセンは魔法によって生み出された門を潜る。その先に見えた景色は、つい先日やってきた豪華絢爛な街並みであった。




