EP9-14 - 頭脳担当な二人
ワイルの述べた考えを理解した一同は、先に行動を起こしていたリーバの背中を見る。古文書に記されている幾つかの単語には、既に意味をメモ書きしていたとはいえ、本の頁は約五百ほどもある。その中で封印を解く魔法を探すとなると、これまたかなりの時間を要することになりそうだ。
「何か手伝えることは……」
ハジメはそう言いかけたものの、封印について書かれた本は一冊しかない。下手に横から手伝おうものなら、逆に邪魔となってしまうだろう。
ならばリーバに全てを任せて休むべきだろうか。そうするしかないのかもしれないが、罪悪感がその選択肢を選ばせてくれない。そんな中、ハジメは今行っていることの問題に気が付いた。
「ところで、封印を解く魔法を見つけたとして、それは古代魔法なんだろ?」
「当たり前のことを聞くなよ」
何馬鹿なことを、とでも言いたげな呆れた表情でワイルは言う。
「古代魔法について書かれている本なんだ。そうに決まっているだろ」
「じゃあ、見つけたとしても唱えることはできないんじゃないか? 古代魔法を使える人間はいないだろ?」
「それは……」
その通りだ。とワイルは思う。寧ろ提示されたその問題については、古文書の中から魔法を探すことを提案した時から気が付いていた。見つけたところで唱えることのできる人物がいないのであれば、意味がないのではないかと。
「……他に方法が思いつかないのだから、仕方がないだろう」
「責めるつもりはないぞ。お前と違ってオレ達は何の解決法を見出していないんだ。だが、見つけたときのことを考えた方がいいな」
「見つけたときって、どういうことだ」
「見つけた魔法を唱えなければならないだろう。古代魔法を使えるようにするか、それとも現代魔法に変換することができないか、どちらかの方法を模索する必要があるんじゃないかと思ってな」
「……なるほど」
ハジメの言うことは尤もだ。古代魔法を扱えないのであれば、それを自分たちが使えるようにするしかない。
過去にワイルたちは雪を降らせる古代魔法を見たことがある。現代魔法にも雪を降らせる魔法があることを考慮すると、古代魔法と現代魔法は詠唱文が異なるだけで、同じ効果の魔法を唱えることができる可能性がある。
「他に古文書はあるか?」
「ん? あぁ、幾つか持ってきているが」
ワイルは生徒会長が取り出した本を奪い取ると、ペラペラとページを捲った。その本は白い玉に書かれている魔法が何なのかを調べる時に使用したものであり、リーバが手にしている本ほどではないが、幾つかの単語に意味が書かれている。
「僕がこの本に書かれている内容を現代魔法に直せないか、試してみる」
「できるのかそんなこと」
「試してみると言っただろう。できるかどうかはやってみなければわからない。だが」
ワイルは眼鏡を外し、レンズを拭いた。これは彼なりの集中するための方法だった。
「本気でやる。ショージュ、手伝ってくれ」
本を開いた彼は床へと座り、ブツブツと呟きながらページを捲っていく。どうやら自分の頭の知識と、目の前の古文書の意味を比較しているようだった。




