EP9-13 - 発想の転換
「ふうん。これが古代魔法が書かれているっていう玉か」
再度古学博物館へやってきた古代魔法研究会、及び実技魔法研究会の一同。話に聞いていた封印の魔法文が記された白い玉を見て、ワイルがそう呟いた。
「玉に書かれた魔法が記されていたっていう本は?」
「この本だよ。ページで言うと……」
生徒会長が持っていた本を開き、ワイルが見えるようにそれを手渡した。本を受け取ったワイルはページに記されている内容を端から端まで見ていくと、他のページも確認するために本をパラパラと捲っていく。やがて最後のページを読み終わると、ワイルは納得した様子で本を閉じた。
「なるほど。ボクは古代魔法に詳しいわけじゃあないが、お前の推測が間違っている可能性は低そうだ」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、今欲しいのは褒め言葉ではなくての。肝心の封印を解放する方法、何か思いついたかの?」
リーバの問いかけにワイルは答えない。それは考えがないのではなく、寧ろ解決の糸口を掴むために熟考しているようだった。
沈黙が場に流れる間、リーバは視線をワイルからショージュに移す。考え込んでいるワイルとは反対に、ショージュの方は何のアイデアもなかったようで、視線に気が付いた彼女は首を横に振った。
「この魔法文は」
考えがまとまったのか、ワイルはメガネのブリッジを押さえてから口を切る。
「本に書いている内容から推測したんだっけな」
「……? うむ。そう伝えたではないか。それにお主もついさっきワシの推測が間違っている可能性は低いと……」
「なら、その推測を続けるのが一番の近道なのかもしれないぞ」
「すまない。もう少しわかるように言ってくれないか、ワイル」
ハジメの要望に対して呆れたような溜息を吐いたワイルは、どこか見下したような表情で言葉を紡ぎ始めた。
「前提として、この玉に書かれている魔法文の内容がリーバの推測と合っていて、玉に何かが封印されているとする」
「おう」
「そして、今この場にいる誰もが玉に書かれている封印を解く魔法を知らない。ここまではいいか?」
ハジメは頷いて話の続きを促した。前提を確かめたうえで、再びワイルはその口を開く。
「加えて、リーバはこうも推測していた。この封印の魔法というのは、古代魔法にのみ存在する可能性が高いと」
「言っていたな」
「これにはボクも同感だ。だから、古代魔法の中で封印を解く魔法がないかを探すべきだとボクは思う」
「そうは言っても、誰も古代魔法なんて知らないぞ」
「なるほど、それで推測を続けるというわけじゃな」
今度はリーバがワイルの話に頷くと、彼が持っていた本を受け取り、再び最初のページから読み始めた。理解が追い付いていない他のメンバーに対して、ワイルは再び説明を続ける。
「あとはこいつがやっている通りさ。本の中の単語や文章を見て行って、封印を解く魔法と思わしきものを探せばいいんだ」




