EP9-6 - 一方その頃王都では
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「……流石に死の間際にいるというだけはあるな」
古代魔法研究会一同が博物館にて議論を交わしている頃、エリーとその父親であるスーンは王都へとたどり着き病院にいるフィニティの下へとやってきていた。フィニティの症状は変わらずであり、彼女は苦しそうな息を吐きながらも意識を取り戻すことなく眠り続けている。
「聞いているかもしれないが、魔臓がやられていている。長くはもたん」
無愛想な医者もその場に立ち会っており、フィニティの病状についてをスーン達に伝えていた。
「魔力が体から抜けているということか」
「その通りだ。魔臓を治すか、魔力をこの娘に注入する必要がある」
「なるほどな。どちらも今の医療では為すことができない方法というわけか」
「お前さんの言う通りだ。奇跡でも起きない限り、この娘が助かることはない」
このままではフィニティが待っているのは死だ。それを何とかするために、今フィニティの仲間たちは動き回っている。この場にいるエリーも含めて。
「どうですか、お父様」
「……試してみるか」
そう言うと、スーンは自らの手をフィニティの胸元に翳し、ボソボソと何かを唱え始めた。小さい声ではあるが、彼の手の先に白色の魔法陣が生成されたことを見る限り、唱えているのは魔法のようだ。
「汝は我。此の身に流るる活力を分け与えん……エナジー・ギフト!」
スーンが魔法を唱え終わると同時に魔法陣は光り輝き、その光がフィニティの体を包み込んだ。すると、先ほどまで苦しそうにしていたフィニティの表情が心なしか穏やかなものへと変わっていた。
「お父様、今のは?」
「……先ほど、そこの医者が、言っていたことだ」
スーンは息を切らしながら、自らの娘の質問に答える。どうやら今の魔法のせいで酷く疲労が溜まってしまったようだ。
「わたしの魔力を分け与える魔法を唱えた。……それだけのことだ」
「ですが、今の医療だと不可能だと」
「だから、試すと言っただろう。つい最近、研究によってこの魔法の使い方がわかってきたのだ。まだ世間には公表されていないがな」
エリーの隣に立つ彼は元々魔法の研究者だ。最新の魔法についての情報を知っていてもおかしくはないだろう。
しかし、娘である彼女は、てっきりこの父は魔法の研究に関して一度手を引いているものだと思っていた。最近は学園の経営や、教師としての業務をメインとして行っていたためだ。
「しかし酷く体力を持ってかれる魔法だな。血液を抜いているようなものと考えれば、妥当なところか」
息は整ったものの、その顔には未だ疲労の色が見られる。少なくともこの魔法だけでは、フィニティを助けることはできなさそうであった。
めちゃくちゃ久々に魔法が出てきましたね……。




