EP9-5 - 思惑に気づいた人たち
「どうしたの生徒会長。何か気が付いた?」
「あぁ、この古代文字の並びに見覚えがあってね」
「なにっそれは誠か!」
リーバの問いかけに頷きで答える生徒会長。彼はセンの隣へと移動すると、その肩をポンと叩いた。
「チャーティー先生がフィニティの家から持ってきてくれた本の中に、この文字と同じ並びの文章があったはずだ」
「あれ、そうだったか?」
当の本人は覚えていないようだったが、それでも生徒会長の自信は揺るがない。
「俺は一旦学校に戻って本を持ってくるよ。古代文字が読めなくても、また何か手がかりになるかもしれない」
生徒会長はそう言うと、入口に向かって駆けだした。学校からこの博物館までは歩いて数十分程度かかることを考慮すると、彼が戻って来るまで往復で約一時間弱かかるかもしれない。それまでに残ったメンバーは、他に何か得られる情報がないか確認することにした。とはいえ古代文字が読めない以上、中々難しいことではあるが。
「この玉って遺跡から発掘されたんだよね」
そんな中、ふとシャータがそう呟いた。
「うむ。そうらしいが、それがどうかしたかの?」
「いやあ、それにしては……」
シャータは視線を白い球体から周りの展示物へと移していく。それぞれの展示品を眺めたあと、彼女の視線は再度例の白い玉へと戻っていった。
「随分綺麗だなって思って」
「どういうことだ?」
彼女の言いたいことがいまいち汲み取れず、ハジメはその意図を確かめようとする。
「ほら、他の物ってやたらボロボロだったり、文字が書かれていても読み取れないくらい擦り切れていたりするじゃん」
シャータが言ったように、展示物のほとんどは原形をとどめていないようなものが多かった。石板や動物の骨などもあるがどれも欠けていたり、文字が書かれているものは筆跡が読み取れないほどに擦り切れていたりしている。
「だからどうして、この玉だけこんな綺麗な状態なのかなって」
「それは……何故だろうな?」
ハジメだけではなく、他のメンバーも答えることはできなかった。言われてみれば、この球体だけ妙に綺麗な見た目をしている気がする。まるで最近作られたようにも思えてきた。
「新しいものだとしたら、やっぱり古代魔法を知っている人が文字を書いたのかな」
「その可能性は高いじゃろうな」
「……で、生徒会長が言うにはフィニティの家にあった本と同じ言葉が書かれているということか」
もし、生徒会長が言っていたことが合っている場合、この玉に文字を書いたのはフィニティの祖父母たちである可能性も出てくる。答え合わせは、彼が戻ってきてからになるだろう。
生徒会長が博物館を出てから約二十分。恐らく今頃学校に着いているはずだ。戻って来るには、同じくらいの時間がかかるに違いない。




