EP9-4 - 無駄なことは一つもない
「へぇ。これが例の古代文字が書かれていたという玉なんだね」
館長の好意によって再び開催された古代遺跡展覧会。遺跡の中から発掘された数々の遺物を展示している催しで、フィニティが注目していた白い玉もその展示品の中の一つだ。
セン、リーバ、ハジメの三人は以前展示されていた時に一度見たことはあったが、シャータと生徒会長はその球体を初めて目にする。事前に聞いていた通り、玉には古代文字が書かれていた。しかし、それ以外の特徴といったものはなく、ただの白い玉であった。
「リーバ、何かわかるか?」
「うーむ。実物を見たら何かわかりそうな気がしていたのじゃが……」
この場に古代文字を完璧に読むことができる人間はいない。もしかしたら少しだけでも内容がわかるのではないかと考えていたリーバであったが、そう上手くいかなかった。
他のメンバーも何か手がかりになる文字はないかと思い、色々な角度から白い玉を眺める。そうした結果、メンバーから出たのは諦めの溜息だけだった。
とある一人を除いて。
「ん?」
何かに気が付いたのは生徒会長だった。彼は手のひらに書かれている古代文字を一文字ずつ書いていき、しっかりと頭の中に記憶していく。そうして最後の文字を書ききった後、視線を玉から宙へと上げた。
「あれ、生徒会長どうしたの?」
「うーん……」
この文字の並び、どこかで見たことがある気がする。
古代文字を見る機会はつい最近あったはずだ。そう、あれは昨日のこと――。
「あ!」
そう、昨日だ。センがフィニティの家から持って来た、古代文字で記載されたたくさんの本。古学博物館へ行くという方針が決まった後、彼はその本を手に取って呼んでいた。全ての本を読むことはできなかったし、相変わらず内容はわからなかったが、それでもはっきりと覚えている。
あの数冊の本の中に、この玉に書かれている古代文字と同じ並びがある、ということを。




