EP9-3 - 理解ある責任者
「騒々しいですよ貴方たち。館内では静かにしなさい!」
言い争いを続けるリーバと生徒会長の間に入って来たのは、全く持って見知らぬ人物であった。その人物は恰幅の良い中年男性であり、フォーマルな服を着用している。
「す、すみません。二人には私の方から注意をしておきます」
騒々しくしてしまった生徒に代わってセンはその男に謝罪をする。そして彼が何者なのか、それを問いかけることにした。
「ところで、貴方は一体?」
「わたしはこの博物館の館長です。貴方が引率者ですか。静かにできないようなら出て行ってもらいますよ!」
「館長……」
目の前に現れた男はこの博物館の中で一番偉い人物であった。そのことを真っ先に気が付いたリーバは、注意をされたにも関わらず大きな声で館長へとある要望をし始めた。
「館長殿! 一つ頼みがあるのじゃが!」
「静かにしなさいと言ったでしょう。話はそれからです」
「それはすまないと思っておる! だが人の命がかかっているのじゃ!」
「……人の命?」
「ちょっと待ってくれリーバ。話がかなり飛躍しているし、その頼み方は失礼すぎるぞ」
センの言う通りだ。恐らくリーバの頼みを聞いたところで、フィニティを助けられるとは限らない。それに、頼みごとをするにはあまりにも唐突すぎる。本来ならば事前にアポイントメントを取り、連絡を入れたうえで話を聞いてもらう必要があるはずだ。
「……いいでしょう」
「ほら、館長さんも。……って、え?」
「人の命と聞いてしまっては断れません。話してみなさい」
「感謝するぞ館長殿!」
館長はリーバの話を聞き、これまでに起きた出来事と何故ここに訪れたのかを理解した。そして彼女が何をしてほしいのかを知った館長は、まず一言こう呟く。
「難しいですね」
「……それは重々承知のうえじゃ」
「あの玉は当館が所有しているものではなく、国が所有しているものです。博物館に展示をするという用途で借りているだけで、とある個人にのみ見せると言うことはルール違反です」
リーバの要望とは、先ほど話題に挙がっていた白い玉を見せてほしいということだ。フィニティが注目していたあの展示品は、何かしらの手がかりとなるに違いない。
しかし、館長が言ったように特定の人物のみに見せたりすることはルール上不可能なのだ。その玉自体は未だこの博物館で保管しているとのことだが、リーバの要望を叶えることはかなり難しい。
やはり無謀な頼みだったか。そう思ったリーバが引き下がろうとしたとき、館長がとある提案を持ちかけた。
「しかし、展示会を延長するという名目であれば、まだ許されるかもしれませんな」
「……え?」
「事前に連絡している展示期間を過ぎているので罰はあるでしょうが、今日一日のみ展示会を行うと言うことであれば、まだ合法的な範囲でしょう」
「か、感謝するぞ館長殿!」
礼の言葉を聞いた館長はすぐにその場を去り、展示会の準備に取り掛かり始めた。並んでいく展示品の中には、例の白い玉もあった。
体を壊しかけたので休職をすることになりました。




