EP8-18 - 歩みを一歩進めてく
「黒いコートの人物がフィニティの親?」
「どういうことだい。シャータ」
シャータが口に出したとある可能性。それを聞いた一同は、何故そう思ったのかを彼女に問いただす。話を切り出した張本人は、少し自信なさげに自らの推理を語り始めた。
「だってさ、そもそもヤクノシュ山に目を付けている時点で不審でしょ。あんな山に何があるっていうのさ」
「フィニティの家があっただろう?」
ハジメはそう言うが、それは結果的に一同が知ることになった情報だ。わざわざ山に登らなくては、フィニティの家があることなど知りようもない。
「てことは、あの山に何かがあるということを知っている人ってことでしょう?」
「そうなるね」
「それを知っている人物なんて、フィニティの祖父母か、その関係者しかいないんじゃないの?」
「……なるほどのう」
そしてフィニティの祖父母は行方不明。彼らの関係性で今のところわかっていることは、出会ったことのある人物が王立図書館の司書のみ。
他にもし、山に何かがあることを知っている人物がいるとしたら、その山へ過去に訪れた人物しかいないのではないだろうか。それがシャータの主張だ。
「その過去に訪れた人物とやらが、フィニティを山に置いていった人物、即ち彼女の親ということかの?」
「うん」
勿論ただの可能性だ。そもそもの話、フィニティが山に捨てられたという証拠もない。しかし、何者かがフィニティをヤクノシュ山に置いていったのも事実なのだ。そう考えると、可能性の中でも特に高いのは、やはり彼女の親ではないのだろうか。
「だが、黒いコートの人物が親だと仮定して、だったら尚更フィニティを襲う理由がわからんぞ」
「まぁ、それはそうなんだけど」
「フィニティのことを嫌っているからじゃないのかい?」
「それだったらわざわざ近づきにいかないだろう。捨てた時点で縁は切れているんだから」
やはりこの推測は誤っていたのだろうか。そうシャータは考えるが、以外の他この推測に乗っかって来た人物がいた。リーバだ。
「親かどうかはともかく、密接な関係性はありそうじゃの」
「なんでそう思うんだ?」
「実技魔法研究会の事件があったじゃろ。あの時、黒いコートの人物が防災装置の魔法石に記載されていたのは古代魔法じゃった」
確かにそうだ。装置の解体をしたセンや、その場にいたハジメもそのことを思い出したようだ。
「そしてフィニティやその祖父母も古代魔法を扱える。ということは、やはり黒いコートの人物は彼らの知り合いである可能性は高いと考えられるじゃろ?」
「確かに……!」
「その正体はともかく、彼女の親という線は十分考えられる。もしかしたらフィニティを通して、老人たちに何かをしようとしていた……なんてこともあるかもしれんの」
ここまで来ると、流石に推理というより妄想だ。だが何もかもわからない時と比べて、少しずつ真実に近づいているような気がする。センたちはそう思っていた。




