EP8-15 - 解けない問題は後回し
購買部のおばさんに話を聞いた後、シャータとハジメは特別枠クラスへと向かい、フィニティのクラスメイトからも彼女の情報を集めに向かった。しかし、購買部の時ほど有益な情報を得られなかった二人は、諦めて仲間である生徒会長と合流しに生徒会室へと戻って来たのだった。
「お帰り。何か良い情報は得られたかい?」
「シャータが気になることがあるらしいぞ」
「うん。フィニティのことでちょっとね」
シャータは先ほど自らが感じた違和感と、思ったことを二人に伝えた。フィニティが物や文明を知らなさすぎることと、そして何故そのような状況で彼女が育つことになったのか、誰かの意思を感じるということだ。その話を黙って聞いていたハジメと生徒会長は、シャータが話し終わった後に口を開く。
「確かに、古代魔法やら魔法力の大きさやらに気を取られて気が付かなかったな」
「考えてみれば、その生い立ち自体が不可解だということだねぇ」
「偶然って言っちゃえばそこまでなんだけど、それにしてはできすぎだよ」
偶々人里離れたヤクノシュ山に人が住んでいて。
偶々そこに子を捨てた夫婦がいて。
偶々その子を拾った人がいて、そのまま山で育てられて。
そして一度も山を下りることがなく、誰と会うこともなく育った。本当にそれは誰の意思も介入していない、偶然のできごとなのだろうか。
「そうなると誰も見ていない祖父母とやらも、存在するかどうか怪しくないか?」
「いや、司書様が会っているというのだから存在はするのだろう。それがフィニティの祖父母の正体かはわからないが」
「どこまで本当で、どこからが嘘か……」
それとも全て本当か。或いは全てが嘘なのか。
フィニティを助けるために情報を集めているというのに、逆に分からないことが増えていく。フィニティ・フレインというのは一体どういう人物なんだ。あれだけ一緒にいたというのに、彼らは何も知らなかった。
沈黙が続く。またフィニティを知って、フィニティをわからなくなるのだろうか。そう思うと、どのような行動をとればいいのかがわからなかった。
「……よし。考えるのはやめた」
そんな沈黙を破ったのは、思ったことをいつも口にする彼だ。
「ハジメ? やめるって……」
「簡単だろ。今はフィニティを助けなきゃいけないんだ。色々知ってわからなくなろうが、それがフィニティを助けるための手がかりになるならやるべきだろ?」
「……!」
あぁ。大切なことを忘れそうになっていた。
ハジメの言う通りだ。情報が増えて混乱することになったとしても、後から解決すればいい。今のままだとフィニティを助けることはできないんだ。ならば今、やることは一つ。どんどん情報を集めることだ。
「良いことを言うじゃんハジメ!」
「ん? ……おう!」
何故褒められたのか、まったくわかっていない様子でハジメは元気よく返事をするのだった。




