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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード8

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EP8-4 - 記憶を頼りに

 ――――――


「……本当に大丈夫なのかの?」


 マージ・モンドのあるエハキガの街から離れ、フィニティの家を目指してヤクノシュ山を登るセンとリーバ。彼らは視界の果てまで草木で埋め尽くされている山を地図もなくただただ歩いていく。目的地どころか景色すら変わらないその登山は、不安を心に宿すには十分な行為であった。


「多分、大丈夫のはずだよ。行きで僕が倒れた時の場所まで行ければ、そこからフィニティの家まで行けるはずなんだ」


 そしてその倒れた場所は、センが山の麓からガムシャラに真っ直ぐ進んでいった場所でもある。そうなると、今進んでいる方角は間違いではないはずなのだ。


「そうだ、足元に気を付けてくれ。トゲデビリリっていう毒草があるはずなんだ」

「ほー。あまり聞いたことのない植物じゃの」

「服の上からでも棘が刺さるような毒物だ。しかも、刺さるとその場に倒れるほど毒性が強い」

「洒落にならんの……」


 そう、洒落にならなかった。あの時フィニティと出会っていなければ、センは死んでしまっていたかもしれない。自分の命を救ってくれた恩人を助けるためにも、絶対に彼女の家へとたどり着く必要がある。センは足を動かす速度を上げて、草木をかき分けて進んでいった。


「おっと」


 そうして歩くこと数十分。ようやくセンの足元に見覚えのある植物が現れた。紫のいかにも毒々しい色合いをしており、茎部分には幾つもの鋭い棘が生えている植物。以前にセンを傷つけた毒草、トゲデビリリだ。

 ということは、過去に彼が倒れた場所へたどり着いたこととなる。あとはここからフィニティの家まで向かうだけだ。センは以前下山するときに、フィニティの家からこの場所まで一時間ほどかけて歩いてきた。その記憶を頼りに、センはリーバを連れて彼女の家を目掛けて足を動かし始める。


「確かこっちの方角のはず……」


 変わらない景色が続く中、彼らは一歩一歩足を進める。本当に道は合っているのだろうか。心に宿る不安が膨らむ中、視界の奥の方に草木ではないものがちらりと見えた。自然にできたものではなく、恐らく誰かが作った人工物だ。その人工物の正体を知るために、センは小走りで山を駆けていく。目的地であってくれ、心の底からそう祈りながら。


「やった……」


 願いは通じた。彼が駆け抜けた先にあったのは、以前お世話になった少女の家だった。

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