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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード7

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EP7-29 - 最後の希望が果てにある

 フィニティの祖父母を探すこと、それが傷ついた彼女を救う唯一の手段だ。その祖父母の情報はまったくないが、やり遂げなければフィニティは死んでしまう。何としてでも探し出すしかないと、センは強く決心した。


「待て」


 そんなセンを呼び止めたのはフィニティを診察した医者だった。希望はあると宣言したセンに、彼は何か言いたげにこれまで以上の厳しい表情で近寄った。


「……持って、二週間だ」

「え?」

「彼女の命だ。長く見てそれだ。実際には一週間程度と考えて良いだろう」


 先ほどと同じく淡々とした口調。だが、どことなく感情が込められたような声で医者は言う。一週間から二週間。何かを行うために用意した時間としてはあまりにも短い。その短い期間でしか生きられないということを聞いて、一同は改めてフィニティの状態の深刻さを理解した。


「先ほどお前が言っていた、古代魔法や治癒魔法。そんな荒唐無稽な話は一旦置いておく。現実的な話として、お前達のこの期間の中でその希望とやらを用意できるのか」

「……断言はできません」


 センはそう答えた。彼が先ほど考えたように、自分を含め、この場にいる誰もがフィニティの祖父母に関する情報を持っていない。それこそ、現実的な話をするならば不可能だと言えるだろう。

 しかし、可能性はある。ここで何もせずに立ち尽くして彼女の最期を看取るより、残された小さな希望を探して行動した方が良いはずだ。だって、彼女を助けることができるのかもしれないのだから。誰一人言葉には出さなかったものの、それはここにいる皆の共通の認識だった。


「ですが、賭けるべき価値はあります。それまで彼女をお願いできますか?」

「……わかった」


 医者はその答えを聞くと、患者であるフィニティを抱えて病室へと運んでいった。そして一同の下へ戻ってくると、相変わらずの真剣な表情でこう言った。


「医者として最善は尽くす。だからお前たちも最善を尽くせ」

「……はいっ!」


 力強い声で返事をするセンを見て、医者は初めてその顔に笑みを浮かべた。ような気がした。

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