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フィニティ・フレインは山を下りて何を思うのか  作者: 鳥羽 こたつ
エピソード7

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EP7-27 - 始まりが繋ぐ希望

 良くない状況、医者はフィニティを診察してそう言った。ぶっきらぼうに対応する医者の顔は変わらないものの、彼が発する抑揚のない声が事態の深刻さを想像させる。


「良くないって、どれくらい良くないんだ?」


 そんな中、ハジメはフィニティの症状について問う。誰もが気にはなっていたが中々踏み込めなかった一歩を、彼が踏み出した。

 医者は眉間に皺を寄せてハジメの方をちらりと見ると、すぐにフィニティへ視線を戻す。そして聞き取りにくいほどの低い声で答えてくれた。


「恐らく、魔臓をやられている。体に必要な魔力が抜け出している状態だ」

「魔臓を?」


 どうやら黒いコートの人物が放った熱線はフィニティの魔臓を射抜いたらしい。そのせいでフィニティは体内の魔力を空気中に流してしまっているとのことだ。


「もっと詳しく診察する必要はあるが、このままではこの娘は死ぬ」

「何だと⁉」


 淡々と話していた医者が再び沈黙した。嘘ではない、ということなのだろう。医者はフィニティを前にして、何もせずにただただ立ち尽くしていた。


「多少傷ついているくらいならばなんとかなるとは思うが、損傷具合によっては助かる可能性は低いだろう」

「そんな、何とかならんのか?」

「魔臓や心臓を治す方法はわかっていない。お前達も覚悟を決めろ」


 確かに、とセンは思った。ここ数年で魔法や医学については著しく進歩しているものの、内臓を修復するような技術は発展していない。それこそ多少の損傷であれば時間をかけて自然治癒するのを待つこともあるが、今のフィニティのように大きく傷ついた臓器が治ることはほぼありえない。医者が言う通り覚悟を決めるしかないのだろうか。

 ちらりと周りを見ると、生徒たちは絶望の表情を浮かべていた。エリーは今にも泣き出しそうにしており、ハジメは額を押さえてうつむき、リーバと生徒会長は一言も声を発せずに黙っていた。

 無理もない。仲の良い生徒が今ここで死ぬかもしれないのだ。普段通りに振舞う方が不可能だろう。

 かくいうセン自身も言葉を失っていた。自分がもっとしっかりしていれば、フィニティが傷つくことはなかったかもしれないのに。そういえば、彼女との出会いも傷が原因だった。自分が怪我をして彼女と出会い、学校へと連れて行ったのだ。こんなことになるのであれば、彼女をマージ・モンドへと誘わなければ良かった。センは自らの行いを後悔した……。


(……待てよ?)


 あの時自分がどうして助かったのか。それはフィニティが治癒魔法を使えたからだ。治癒魔法が使える人物はこの世界にいないと、世間一般的に言われている。そう、一般的には。

 しかし彼女は治癒魔法が使え、それだけではなく失われた古代魔法も扱える。それは独学ではなく、彼女の祖父母から教えてもらったためだ。では、その祖父母も扱えるのではないだろうか。

 禁断の魔法、治癒魔法を。

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