EP7-21 - 守ってくれる人たち
「普通じゃない力、ねぇ」
フィニティの昔話を聞いた一同。その中で最初に反応を示したのは生徒会長であった。そういえば彼はこの中で唯一古代魔法研究会とは関係のない生徒だ。加えて彼女が古代魔法を使ったところを見たことのない生徒でもある。
「つまりそれがフィニティの古代――」
「いやぁーっ嬢にそーんな力があるとはのーッ」
古代魔法のことについて言及しようとしたハジメを遮るように、すっとぼけた大声を張るリーバ。普段おちゃらけた態度をとっている彼女だが、今回の奇行にはちゃんと理由があった。フィニティが古代魔法を使えるということ、それを知っている人物はなるべく限定的にしておきたいと、エリーとリーバは考えていたからだ。
古代魔法は国が勢力を上げて研究している分野の一つだ。魔法の全貌どころか、古代文字の読み方一つで研究者たちが白熱の議論をするほど、まだまだ謎が多い分野である。そんな古代魔法をフィニティは使いこなすことができるのだ。彼女の知識を欲する人物は一人二人では済まないだろう。彼女を巡って争いが発生する可能性は決して低くない。
更に、フィニティの存在を金儲けの手段として欲しがる人物もいると考えられる。珍しい魔法として古代魔法を唱えさせ、それを見世物として金を稼ぐような輩だっているだろう。そんな人物たちからフィニティを守るため、エリーとリーバは古代魔法のことをなるべく口外しないようにしていた。そのようなこともあって、生徒会長にフィニティが古代魔法を使えるということを知られないようにしたのだ。
「どうしたんだいリーバ。変な声を出して」
「うるさいのー、これは生まれつきじゃわい」
「……おぉっ!」
そして再び大きな声を出した人物がもう一人。ここの図書館の司書だ。
「ど、どうしたんですか。司書さん」
「思い出しましたぞ。最後にゲシハ―さんとサオエルさんに出会った時のことを!」
「本当ですか?」
「間違いありません。あれはやっぱり二年前の出来事です!」
「二年前!」
やはり彼らはフィニティの下を去った後、この図書館へと来ていたらしい。そして司書に会い、行方が知れなくなったということだろう。その行方を知るためにセンは話の続きを促すものの、司書はバツが悪そうな表情を浮かべていた。
「それが、彼らはある一冊の本をワシに渡すとすぐにどこかへ去ってしまったのです」
「どこへ行くかなどは聞いていませんか?」
「残念ながら……」
肩を窄め、申し訳ないという様子を全身で表現する司書。手がかりになるようなものがあるとすれば、渡したというその本だろうか。




