EP2-5 - そしてたどり着く少女
「二人だ。マージ・モンドまで頼むよ」
センはそう言うと人力車に乗り込み、奥へと詰める。そしてフィニティにも乗車するよう促すが、初めて見る車という存在が珍しいためだろうか、彼女は目を輝かせながら人力車の周りを歩いていた。それを見た運転手の男が嬉しそうに声を掛ける。
「お嬢ちゃん、車に乗るのは初めてかい」
「はい! 見るのも初めてです! これ、どうやって動くんですか。やっぱり魔法を使うんですか?」
「はっはっは! 魔法を使う車ってのはまだ開発されてねぇなぁ。こいつは俺っちが、お嬢ちゃんとお父さんを乗せて引っ張っていくのさ」
「すごい、力持ちなんですね!」
「いや、僕たちは親子じゃないんだが……」
訂正するセンであったが、その声は車の話題で盛り上がる二人には届くことはなく、虚空へと消えていく。
車が発進したのは数十分後のことであった。街をある程度廻ってからマージ・モンドへ向かうことになったので、到着するのは二時間後くらいになるだろう。話の中でフィニティが初めて街に来たと聞いた運転手は、彼女のために街を案内したいと言い出したのだ。料金外のサービスを受けるわけにはいくまいとセンは断ろうとしたが、それは運転手の好意を無下にすることとなる。せっかくだからと、二人はその好意に甘えることとした。
「わぁ、すごい!」
初めて乗る車に興奮するフィニティ。それも当然のことだろう。歩くときとは速さも目線の高さも違うのだから。
目まぐるしく変わる景色。見たことのない建物が次々と視界に入ってくるその状況に、フィニティの興奮が冷めることはなかった。
「あれはなんですか?」
「女性向けの服屋だな。品ぞろえが良いと生徒たちが話していた」
「あれはなんですか!?」
「博物館だな。最近古代の魔道具が見つかったと宣伝していた」
「あれはなんですかっ!?」
「クレープ屋だな。僕は行ったことがないが、どうやら最近流行っているらしい」
目に映るすべての建物を質問するフィニティ・フレイン。初めてやって来た街という場所は、彼女が知らない物の塊だった。見たことのない物、建物、食べ物。全てが彼女の興味を惹き、全てが彼女の好奇心をくすぐる。そこにいたのは年相応の女の子だった。最初に出会った頃は全く見られなかった彼女の『感情』を見ることができ、センは思わず笑みを溢す。
「あれは何ですかっっ!?」
「あぁ、あれが……」
気が付くと既に日は落ちていた。彼女の喜ぶ様子を見ているうちに時間を忘れてしまっていたようだ。
フィニティが指を差す方向にあるのは、街を囲っていた街門と負けず劣らず豪勢な門構え。その先に見える広大な敷地、そして煌びやかな装飾が施された大きく立派な建物。その建物は、これまで見てきた街のどの建物よりも広大であった。
「あれが僕たちの目的地、魔法学校マージ・モンドだ」
タイトルやあらすじ等、そろそろ整理しようと考え中です。




