EP7-13 - それでもお酒は二十歳から
「やれやれー。ナンパだなんて困ったものじゃのー」
腕を掴まれながら、リーバはニヤニヤとした笑顔を浮かべて器用に肩をすくめる仕草をする。その表情は彼女が発したセリフとは正反対の感情が込められているように見えた。
「ま、ワシの魅力がわかるだんてお主は慧眼の持ち主じゃて」
「そんなこと言ってる場合か?」
「ちょっと良くない状況だねぇ」
リーバたちは制服という酒場には場違いな服を着た集団だ。ただでさえ目立つ格好をしていることもあり、少しでも騒ぎを起こしてしまえば周りから注目を浴びてしまう。
そんな彼女たちの席でナンパと絡み酒、二つのイベントが発生したとなれば、店中の視線が集まってしまうのも仕方がないと言えるだろう。
「お子様たちが一体何をしに来たんだい。まさか悪いことでもしに来たのか?」
「違う。俺たちはただ、飯を食いに来ただけだ。」
「兄ちゃん達みたいな未成年だけでかい」
「大人だったらすぐに来る。フィニティ、頼む」
「はいっ」
今度こそ店の外を出てセンやエリーを呼んで来ようとするフィニティ。この厄介な騒ぎも大人がいれば何とか収まるだろう。そう思って席を立ち、入口の扉まで駆け出す彼女だったが、直前に会計を済ませた団体が入口の扉の前で話し始めてしまい、店から出ることができない。そこからどいてもらえないかと必死に懇願するフィニティであったが、アルコールが回っていて気分が高揚しているためか、彼らの耳にフィニティの声は届いていないようだった。
そんな必死な様子の彼女を見て、ハジメは大きくため息を吐いた。助けにはいきたいものの、絡み酒をしてきた男が近くに隣へと座りベラベラと話し続けているせいで、中々席を立つことができない。下手に刺激をしてより厄介な絡み方をされたら困るからだ。
「さて、どうしようかねぇ」
リーバはナンパ。ハジメは絡まれ酒。フィニティは立ち往生。唯一何者にも相手にされていない生徒会長は、自分がどう立ち回るかを考えていた。愉快なことが好きな彼はこのようなトラブルやイベントも好物であるが、今日は歩き続けていたこともあり、そろそろ夕食にありつきたいところだった。そのためにはこの騒ぎを終わらせる必要があるはずだ。
彼は周りを見渡し、話が通じそうな人物を探す。ここにいる客のほとんどが騎士団の関係者だということを考慮すると、その中でも影響力が高い階級にいる騎士もいるはずだ。この中で最も屈強な男、きっとそれがこの中で最も高い階級の騎士のはず。そうして店内をキョロキョロと見渡した彼は、一人の男に目をとめ、その男へと近寄り始めた。




