EP7-7 - 彼は敵なのか味方なのか
「生徒会長さん?」
「何しに来たんじゃ、お主」
「随分なご挨拶だねぇ。そんなにオレの存在が目障りかい?」
「メガネについた指の跡くらいの目障りさじゃのー」
あんた眼鏡なんて掛けたことないでしょうが、とリーバは心の中で呟いた。いや、確かにどれくらい邪魔なのかはわかりやすかったが。
しかし彼女が言うように、何故生徒会長がこの場に現れたのかはわからない。彼が目障りかどうかはともかく、その理由は聞いておきたいところだ。それに、あまり馬車の運転手を待たせてしまうのも申し訳ない。
「話があるなら手短にしてくれる?」
「あぁ、オレもそのつもりさ。詳しい話は後ででもできるからねぇ」
その言葉の意図はよくわからないが、ならば話を後回しにしてもらえないだろうか。こちらは急いでるのだ。エリーはそう生徒会長に伝えると、彼はいつものようにねっとりとした口調で了承した。そして。
「じゃあ、行こうか」
と言い、馬車に乗り込んだ。
「ちょちょちょ」
「待て待て待て」
突飛な行動をとった生徒会長を見て、エリーとリーバは彼の腕を掴み車から連れ下ろす。
「何かな。急いでいるんだろう?」
「何かな、じゃないわい!」
「あんたなんのつもりなの!」
「何って、君たちと一緒に王立図書館へ向かおうとしているだけだよ」
「はぁ?」
二人の声が一つに聞こえるほどぴったりなタイミングで、彼女らは困惑の声をあげた。王立図書館へ向かう、彼は確かにそう言った。何故、彼は今日、古代魔法研究会のメンバーがそこへ行くことを知っているのだろうか。
今日、この五人が王都へ向かうことを生徒会長には話していない。それどころか、フィニティの祖父母についても彼は知らないはずだ。エリーが以前、生徒会室でフィニティについてこの男と話していた時も、彼女の家族の所在などについては話していない。
「何故自分たちの行動について知っているのか、という顔をしているねぇ」
「そりゃそうなるわい。なんじゃお主、ワシらのストーカーか?」
「残念。正解は生徒会長だからだねぇ」
「それ何の回答にもなっていない気がするんだけど」
エリーの言う通りだ。結局この男がこの場に現れた理由がわからない。何故話してもいないことを知っているのかが、だ。しかし、生徒会長はそれ以上何も答えようとしない。どうやらついてこないという選択肢はないようだ。
「のうエリー、どうする?」
「どうするったって……」
彼が何を考えているのかわからない以上、連れて行くのは危険だ。ただでさえフィニティが抱えている謎を知られたくないというのに。
だが、口が達者なこの男を説得するのは確実に骨が折れるだろう。時間だって限られている。どうしたものかとエリーとリーバの二人が頭を抱えている間に、決断の時は訪れてしまった。
「ところでチャーティー先生。オレが利用する馬車代は学校の経費で落とすことができるのだけど、いかがかな?」
「よし、みんなで行こう!」
「……」
……彼がそう判断するのも仕方のないことだった。馬車代は全てセンのポケットマネーから支払われているのだ。それが一台分だけでも減ると言うのであれば、生徒会長の同伴も許可するだろう。加えてこれは、一銭も出していないエリーとリーバには異議を唱えることができない判断であった。




