EP7-6 - 馬の車に乗せられて
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「さて、出発するとするかー」
フィニティの祖父母の名前を知っている人物が見つかってから約一週間後、休日を迎えた古代魔法研究会の一同は校門前に集まり、王都へ向かうための馬車に乗ろうとしていた。馬車は二人乗りとなっていて、この場には三台並んでいる。
「お主も来るのか、ハジメ」
「おう。王都に行く機会なんてほとんどないからな。来週のバイトの時間を増やす代わりに今日は休ませてもらったよ」
「融通が利くバイト先じゃのー」
そのせいで利用する馬車が増えてしまい、センの財布に負担がかかってしまったことをハジメは知らない。
そしてそんな悲しみに暮れるセンとは対照的に、目を輝かせて馬車を見る少女がいた。勿論好奇心旺盛な少女であるフィニティだ。
「あたし、馬の車って初めてです!」
「そういえば人力車には乗ったことがあるって言ってたっけ」
「はい! センさんに乗せてもらいました!」
フィニティはマージ・モンドへやって来た時、センと一緒に人力車へ乗ったことがある。それ以来、車という乗り物には縁がなく、これが久しぶりの乗車となった。あの時はすごく楽しかったと、少女は嬉しそうに隣に立つエリーへと語っていた。
「ところで誰と誰がペアになるんだ?」
馬車は二人乗りで、今ここにはフィニティとエリー、ハジメとセン、そしてリーバの五人が集まっている。二人ずつ車に乗り込んだとして、残った者は一人で乗車することとなる。
幼いフィニティを一人にするのは心配だ、と主張したエリーは自分が一緒に乗車すると宣言した。残りの三人はどうするかと話し合いを行った結果、男二人は同じ車に乗り、リーバが一人で乗り込むこととなった。その結果を聞いて、フィニティはリーバの下へと駆け寄り、声をかける。
「一人で大丈夫ですか、リーバさん」
「おや、ワシのことが心配かねフィニティ?」
「だって王都に行くには半年ほどかかるんですよね。その間一人だと寂しくないですか?」
「心配ご無用じゃ。ワシレベルになると一人で二役になりきって会話ができるのじゃよ」
「へー、すごいですね!」
そのスキルは一体いつ役に立つのだろうか。それどころか一体どうやって身に着けたのだろうか。全くほしいとは思わないものの、経緯だけは気になるエリーであった。
「じゃあ乗り込むか……」
「ちょっと待ってくれるかな?」
組み合わせも決まり、馬車に乗り込もうとした一同に声をかける男がいた。つい最近聞いた、覚えのある胡散臭い声。
それぞれがゆっくりと声の方へ顔を動かすと、そこにいたのは金髪の男、生徒会長であった。




