EP7-3 - 保護者の会
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「いやぁそれにしても、あんなに嬉しそうなフィニティは久しぶりに見た気がするのー」
センが部屋を出て数時間後のこと。
クラブ活動の時間も終わりとなり、フィニティは自室へと戻っていった。といっても、彼女が戻った部屋は正確に言うとエリーの部屋ではあるが。彼女は未だにエリーと共に生活しているのだ。
そんな部屋主であるエリーは未だ古代魔法研究会の部室に残っていた。もう少しで今読んでいる本が読み終わりそうだったからだ。部屋へ戻ってからでも本は読めるのだが、キリが良いところまで来たためそのまま部室で読み進めることにしたのだった。しかし、そんな彼女にお構いなく、リーバはエリーへ声を掛け続ける。
「それにしても、こんなに上手く話が進むとはのー。案を出したワシ自身びっくりじゃて」
「……」
「しかも相手が王立図書館の司書。一体全体どう話が転がるかわからんのー」
「……」
「それで、お主はフィニティに何を隠しとるのじゃ」
「……ようやく聞いてきたわね」
エリーは本を閉じ、下に向けていた視線を横で座っている魔女へと向ける。いつも通りのふざけているような笑顔を浮かべている彼女を見て、エリーは面倒くさそうに一つ大きなため息を吐いた。
「ずっとそのことについて聞かれないから変だと思ってた」
「ようやくチャンスが巡って来たからの。恐らくフィニティがいる前だと絶対に口を割らんつもりじゃろ?」
「……どこまで知っているの?」
「さてのー。意外と全部気づいていないかもしれんし、もしかしたら全部気づいているかもしれんの」
とはいえこの様子、やはりフィニティのことについて話していたのは間違いなさそうだと、リーバは自分の推測が当たっていることを確信した。さて、ここからどうやって情報を聞き出そうか。そう考えていると、目の前の人物は想定外の反応を示す。
「ま、あんたは協力者だし話してもいいかな」
「は?」
「なによ」
「協力者ってなんのことじゃ」
「フィニティを守るって話したでしょ。古代魔法が使える唯一の存在だからって」
確かに以前、リーバはそのことについてエリーと話したことがある。そしてそれはエリーが部員でもないのにこの研究会に足を運び続ける理由にもなっていた。
「あ、あぁ。確かに話したが……」
「なに。そんな変な顔をして」
「まさかお主がすんなりとワシに隠し事を共有するとは思わなかったからの……」
「どういうこと? あんたのことはそれなりに信用しているけど」
「……えーいやめんか。尻が痒くなるわい!」
どうやらリーバは思った以上に信頼されているようだ。普段から適当に振舞っている分、彼女は真剣な好意に弱いのだった。




