EP7-2 - 知っている人を知っている人
「本当ですか!」
「ほー。それは確かにお主も慌ててしまうといったもんじゃのー」
センは予想以上に大きな出来事を抱えてやって来た。彼が研究施設へ問い合わせを始めてから約一週間。まさかこんなに早く物事が進展するとは。
「とはいえ本人達が見つかったわけでもないんだけどな」
深呼吸を重ねて落ち着きを取り戻したセンは詳細を語り始める。どういうことかとリーバが訊ねると、見つかったのはあくまで祖父母の『名前』を知っている人であり、それが本当にフィニティの祖父母かどうかもわからないということだ。手がかりになるかどうかすら不明らしい。しかし、その話を聞いたフィニティは目を輝かせてセンに近づいた。
「ありがとうございますセンさん。あたし、その人に会ってみたいです!」
「いいのかい。まずは僕が一人で会いに行って見ようかと思っていたんだが」
「今更何を言っておるのじゃ。どーせ手がかりなんてないのじゃから、みんなで会ってみた方が良いに決まっておろう」
「ん……」
センは少しだけ考え込む様子を見せると、リーバの言い分に納得し首を縦に振る。それにしても、当然のように私も数に含まれているのだなとエリーは思っていた。
「それで、その尋ね人はどこにおるのかえ?」
「あぁ、王立図書館の司書らしい」
「図書館? 研究施設に送ったんじゃないんですか?」
「あぁ。念のためそれらしいところにも何通か問い合わせの手紙を送っていたんだ」
おかげでしばらく徹夜続きだったよ、と欠伸をしながらセンは言う。それで素早く結果を出したのだから大したものだ。
この場で疑問を抱いているのはフィニティだけだった。この街はおろか、まともに学校から出たことすらない彼女にとって、王立図書館というのはどのような場所なのか全く想像がつかなかったのだ。
山を下りてこの学校の生徒になってから彼女はほとんどの時間を校内で過ごしていた。例外があるとすれば、たどり着くことはなかった古学博物館に出向いたときくらいだろう。必死に思考を巡らせるものの、答えのかけらも見えてこない。
「とにかく、日付を決めて王立図書館へと向かおう。馬車を使えば王都へは半日あれば行けるはずだ」
「往復で一日、これは休日が潰れそうじゃのー」
「大丈夫ですかチャーティー先生。馬車代だけで結構なお金がかかってしまうと思いますが」
そんなエリーの何気ない質問を聞いてセンは固まってしまった。フィニティの記憶に取り戻すことについて、出費のことはあまり考えていなかったのだ。
何とかする、とだけ答えた彼は奥歯を噛み締めて部室を後にした。その背中からは哀愁が漂っているように見えた。
何とかなりました。




