EP6-14 - 人々の思惑が交差する
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「おいリーバ、いいのか」
「何がじゃ?」
生徒会室を出た三人は研究会の部室へと戻っていた。そして再び本を読み始めるフィニティを横目に、ハジメはリーバに問いかける。
「最後に何か聞いてただろう。他に話していることがないか、とか」
「なんじゃそのことか。なに、ただの鎌かけじゃよ」
「鎌かけ?」
「生徒会長殿は昔から隠し事が多いからのー。何を隠しているかまではわからずとも、何か隠しているかを確認したかったのじゃよ」
確かに隠し事をしている場合、その内容については漏らしてしまわないよう慎重になるだろう。しかし、何か隠しているかどうかについてまでは気が回らないことが多い。生徒会長もそれは同じだったということだろうか。
「それで、何かわかったのか?」
「うむ。どうやらやはり、ワシらが来る前には別の話をしていたようじゃな」
「ほう。何故そう思うんだ?」
「あのお喋りが言葉に詰まったのは、ワシらが唐突に生徒会室に入った時とワシがその質問をした時の二回だけじゃからの。すぐに取り繕ったものの、動揺したと考えて良いじゃろう」
言われてみれば、生徒会長が言葉を発するときに間が空いたのはリーバが言ったその二回だけだったはずだ。彼女の言う通り、質問に対して動揺した可能性が高い。つまり、何か後ろめたいことがあるということだ。
しかし、そうなると一つ疑問が浮かび上がる。その場にいたもう一人の人間についてだ。
「だが、そうなるとエリーも何かを隠していることにならないか?」
「なるじゃろうな」
「え」
今まで本を読んでいたフィニティが顔を上げ、その名前に反応した。
「エリーさんがあたしたちに隠し事をしているんですか?」
「そうなのじゃよー。一体全体どんな悪事を考えているのじゃろうなー」
「悪事……」
「待て待て、フィニティが真に受けるだろう」
ハジメがフィニティをなだめると、彼らは改めてエリーが何を隠しているのかについて話し始めた。
「何でエリーさんはあたしたちに隠し事なんてするんでしょう」
「個人的な悩み事、だとしたら生徒会長殿と話すことはないじゃろうな」
「つまり俺たちに聞かれたくないが、生徒会長には話して良いこと、ということか」
「あるいは生徒会長殿に何かを質問されたが、その質問についてワシらの前では答えにくいということじゃろうな」
自分たちの前では答えにくい質問。そんなものがあるのだろうか。だが、自分たちに聞かれたくない話だったという可能性は高い。その線で考えると、ハジメの脳内に一つの可能性が浮かび上がった。もしかするとその話題というのは。
「陰口か?」
「阿呆。あの場には生徒会メンバーもいたのじゃぞ。生徒会長と理事長の娘が陰口を叩いていたとなったら誰かが噂を流しているじゃろ」
「……そんなものか?」
「壁に耳あり障子にメアリ―じゃ。噂なんて色々なところから漏れるものじゃよ」
「メアリ―って誰ですか?」
しかし、リーバの中でも一つの可能性を見つけていた。自分たちの前では答えにくい質問、そしてエリーが詳細を握っており、かつ様々な生徒のことを耳にしている生徒会長が気になっている情報。それはつまり、この学校の中の特別な生徒のことについての質問だったのではないだろうか。そしてその生徒とは。
「あの、リーバさん?」
「ん。何でもないぞよ。メアリーについては適当に考えておくと良いぞ」
「なるほど、わかりました!」
フィニティ・フレイン。
何故かは不明だが、恐らく生徒会長は彼女のことについて質問していたに違いないだろう。




