EP6-10 - 意外な幼馴染
「ところで古代魔法研究会の皆さま方。この度は生徒会室に一体何のご用で?」
生徒会長である男子生徒は、その真意が見えない不気味な笑みを浮かべながら立ち上がり、部屋へ入って来たリーバたちへと近寄った。
「ほう。よく俺たちが古代魔法研究会の人員だとわかったな」
「これでも生徒のことを第一に考えている生徒会の長だからねぇ」
「え、じゃああたしのことも考えてくれているんですか?」
「そうなるねぇ」
それとこれとは話が違うだろう。学校全体の生徒のことを考えているのが生徒会であって、一個人のことまでは考えているわけではないはずだ。
まるでリーバのように適当な受け答えをする生徒会長を見て、エリーは心の中で突っ込みを入れざるを得なかった。
「用はさっき話したじゃろ? ちょっかいをかけられた仲間の顔を見に来たのじゃよ」
「それはおかしいな。エリー・サーベスはどこの研究会にも所属していなかったはずだが」
「ワシは仲間、と言っただけで研究会の人物とは言っておらんぞ」
「屁理屈だねぇ」
「屁理屈も理屈じゃぞ」
それにしても、とエリーは思う。この生徒会長、こんなふざけた口調をした魔女を目の前にしても平常心を保っているだなんて大したものだ。私が初めてリーバと話したときなんて頭を抱えるくらい疲れることになったというのに。流石生徒会長、余程のことでは動じずと言ったところか。
「全く、君は昔から変わらないねぇ。リーバ」
「お主もじゃぞ。生徒会長殿」
「もっとも、昔の君は可愛らしいところも見受けられていたんだがね」
「それもこっちのセリフじゃ。いつからお主はこんな胡散臭い男になってしまったのじゃ」
知り合いだったのか……。
話の流れを聞く限りそのようだ。しかも付き合いが長い関係らしい。どうやら幼馴染のような関係性のようだ。エリーだけでなく、生徒会のメンバーもこのことについては知らなかったようで、全員鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。
「会長があの問題児の幼馴染だったなんて……」
「よりにもよってあの魔女もどきと……」
「せめてエリー様と幼馴染ならよかったのに……」
どうやらこの魔女、思った以上に悪い意味で名が知られているようだ。生徒会のいたるところから溜息を吐く音が聞こえる。流石にそこまで言われるほど酷い生徒ではないと思うのだが。
とはいえリーバ本人は全く気にもしていないようで、彼女は未だ生徒会長と言い争いをしていた。最早彼女らが何故生徒会室に来たのかがわからなくなるほど白熱している。エリーはテーブルにフィニティとハジメを呼ぶと、お茶のお代わりを用意して事の顛末を見守るのだった。




