EP6-4 - いざ原点に立ち行かん
「……なら」
ここにいる人たちなら話しても大丈夫だ。こんなよくわからない悩みだとしても。
心の中でそう呟いたフィニティは目線を上げて口を開く。
「聞いてほしいことがあるんです」
フィニティは以前自分が倒れた時に見た夢について、そしてその夢を見て感じたことを語りだした。
自分の祖父と言い争っていた見覚えがあるのに記憶にはない男、何故か博物館の近くに寄ると気分が悪くなったという事実、自分の記憶が正しいものなのかという不安。その一つ一つのことに対して、どうやって解決すればいいのかわからないという悩み。そのことをフィニティは皆に向けてぽつぽつと語った。そしてエリーとセンだけでなく、いつもは冷やかしを入れるリーバでさえもフィニティの言葉を黙って聞いていた。
「ふむ」
やがて全てを聞き終えた後、最初に口を開いたのはリーバであった。彼女は口元に手を当て、普段からは考えられないほど真剣な表情を浮かべてフィニティを見つめていた。
「ただの夢、というわけではなかろう?」
「……たぶん」
「なるほどの。なんとも不思議なことじゃの」
彼女の視線はフィニティからエリーに移る。視線の先にいる彼女も、リーバと同じように思考を巡らせているようであった。
「……チャーティー先生はどう思いますか?」
「うーん。フィニティが大事だと感じるんだったらそうなんじゃないかな」
もちろん、考え事をしているのはセンも同じだ。口調こそいつも通り柔らかなものではあるが、眉間に皺を寄せてフィニティの言葉について真剣に考えている。そして数分間の沈黙が流れ、彼は一度結論を出した。
「とにかく、現時点ですぐに正解は出せないだろうね」
「じゃな。その夢が真実にしろ嘘にしろただの夢にしろ、判断材料が少なすぎじゃて」
「……」
この中で、エリーだけがまだ自分の意見を言えていない。そのことに気が付いていたのはフィニティだけだった。
「エリーさん、何か?」
「……確かめる方法が一つだけある、と思う」
「え?」
「フィニティのその夢が何だったのか、確かめる方法」
エリーが発したその言葉は、この場にいる全員の視線を集めるに値する力を持っていた。皆が驚いた様子で一人の少女を見つめている。
「なんだい、その方法って」
「簡単です。その夢に出てきた関係者を探せばいい」
「関係者……」
「いるはずでしょう。夢の中に出てきた人物で、フィニティが唯一知っている人が」
「……あぁっ!」
フィニティが知る人物で、夢の中にも出てきた人物。そんなのは一人しかいない。
彼女の祖父、じっちゃんのことだ。




