EP6-2 - 貴方が作った味方だよ
「フィニティさん、大丈夫?」
「え?」
放課後、教員室にやって来たフィニティは心配そうな表情を浮かべるフレムーと話すことになった。
その事態はフィニティにとって想定外なものだった。何故なら授業に集中できていなかった彼女は、てっきり教師であるフレムーからの説教が待っているものだと思っていたからだ。まさか自分の心配をされることになるとは、微塵も可能性を考えていなかった。
「明らかに最近様子が変よ。体調でも悪いの?」
「いや……」
あまり良くはない。だが、それは授業に集中できない直接的な原因ではない。
フィニティは再び言葉を濁した。その様子はまるで親にいたずらを問い詰められた子どものようで、額に眉を顰めながら発言を拒否していた。
「わたしには相談できないこと?」
「……」
「そうなのね」
しかし、言葉を濁そうが伝わってしまうものはある。
彼女が何を悩んでいるのかまではわからないが、少なくとも悩み事があるということはわかる。若手ではあるものの教員として日々過ごしていたフレムーには、簡単にそれを理解することができた。
「センやエリーさんには?」
「……」
「わかったわ。無理はしなくていいの」
誰にも話せないこと、ということか。
本人が話したくないと言っている以上、無理やり悩み事を聞くとかえって本人への負担になってしまいそうだ。そう判断したフレムーは席を立ち、目線をフィニティに合わせてから微笑みを浮かべる。
「でも、これだけは覚えておいてね」
「……なんです?」
「わたしもセンも貴方の味方よ。辛くなったらいつでも頼っていいからね」
そう言うとフレムーはフィニティの頭に手を添えて、優しく少女を撫で始めた。
この温かさには覚えがあった。つい先日、エリーさんの手のひらから感じられた温かさと同じものだ。ざわざわとしていた胸の中がすっとしていくような、そんな心地よさがあった。それは体にも現れており、フィニティは自分自身が気づかずうちに口元が緩んでしまっていた。
「貴方はこの学校の、そしてわたしの大事な生徒。最初に出会った時も言ったけど、困ったことがあったらいつでも言ってね」
「……はいっ」
その時の返事は、これまでの元気なフィニティのそれとほぼ同じものだった。
気が付いたら100エピソードいっていました。




