第94話 七不思議
今日も楽しく登校するのだ。
僕は燐火ちゃんと一緒に学校に向かっていた。
「テプちゃん、夜の学校の調査に行こう」
燐火ちゃんが突然提案してきたのでビックリした。
「何で夜の学校の調査をするの? 肝試し?」
「肝試しじゃないよ。学校の七不思議の調査だよ。この前芽衣子ちゃんに教えてもらったんだ」
「学校の七不思議か……肝試しと何が違うんだろう?」
「何言ってるの! 学校の七不思議は危険なんだよ! 死んじゃうかもしれないんだよ!」
「そんなに危険ならやめようよ」
「だ~め。危険だから大魔導士の出番でしょ? 友達が巻き込まれたら危険だから、先に退治しないとね」
「分かったよ。でも学校の七不思議って何があるの?」
「紅鳶小学校のは知らない。でも調べたら何か分かるかも」
「それなら健斗君と翔太君に聞いてみよう。それと夜はダメだよ。調べるのは放課後にしよう」
「うん、そうしよう!」
僕と燐火ちゃんは学校に行って授業を受けた。
放課後になり、僕達は教室に集まった。
「みんなが知ってる七不思議について教えて」
「七不思議か、そんなの今更知りたいのか。燐火の方がよく知ってるだろ?」
健斗君が言った事を聞いて不思議に思った。
今まで燐火ちゃんが怪談について話していた事はなかった。
七不思議について詳しかったかなぁ。
「健斗君、知らないから教えてよ」
「分かったぜ。一つ目は大魔導士フラマ・グランデのローブに水のルーンが描かれている事だ。フラマ・グランデが水系統の魔法を使った事はないのにね。神の炎の魔法を会得する前に水系統の魔法を使っていた、自身の火炎魔法から身を守る為に水の魔力を込めたローブを着ている等の説があるが、未だに解明されていない」
「ちょっとまって! 僕達が聞きたいのは学校の七不思議だよ。今のは何の話?」
「学校の七不思議? 燐火が聞きたいっていうからゲームの話だと思ったよ。俺は学校の七不思議なんて知らないぞ」
「ふっふっふ。君たちは本当に駄目だね」
僕達は一斉に翔太君の方を向いた。
「そういう事なら、この博識のミロス様に聞くべきだろ?」
翔太君が謎のポーズをとっている。
カッコつけているつもりなのだろうか?
たしかミロスって翔太君のゲームのキャラクターだったよね。
ゲームキャラになりきっているだけに見えるけど、本当に七不思議について知ってるのかな?
「さすが俺の副官のミロス。七不思議の正体について教えてくれ」
健太郎促すと翔太君が語り出した。
「堕神歴6318年、バルギアンに苦しめられていたネイラスティアの民は、全ての責はバルギノルと和平交渉をした皇帝タルディアス二世にあるとし、反乱を起こしたのだ。そして反乱軍は1年の激闘の末に保身の為に国を売り渡した皇帝タルディアス二世を打ち倒したのだ。反乱軍を指揮した英雄。本来であれば歴史に名を残す存在であったが、何故かその名を口にする事を禁じられた。名を消された英雄。それが最初の七不思議だ」
「凄いね翔太君」
「俺も知らなかったぜ。紅鳶小学校にそんな過去があったなんてね」
燐火ちゃんと健斗君が感心して頷いている。
でも僕は知っている。
これって魔王様の話だよね。
七不思議は全然関係ないじゃない!
このままだと、ただの雑談で終わってしまう。
「ねぇ、旧校舎行ってみようよ! 情報は自分の足で稼ぐものだよね?」
「おっ、いい事言うじゃないか。賛成するぜ」
「僕も賛成ですよ。知識だけではないって見せてあげますから」
「それじゃ、しゅっぱ~つ」
僕達は校舎を出て学校の敷地内を歩き始めた。
あれっ、旧校舎どこにあるんだろう?
「なかなかつかないね」
「そうだな。翔太は旧校舎の場所知ってるか?」
「旧校舎なら3年前に取り壊されてるから簡単に見つからないと思いますよ」
「えええっ。取り壊されていたら旧校舎ないよね?」
「なんで言ってくれなかったの?」
「そうだよ! 翔太が早く言えば無駄に歩く事も無かっただろ?」
「えっ、みんなが旧校舎行こうっていうから、新しく旧校舎が出来たと思たんですよ」
「新しく建てたら旧校舎じゃなくて新校舎になっちゃうよ!」
「それもそうですね」
翔太君が恥ずかしそうに頭をかく。
これはダメそうだな。
今日はこのまま帰ろうかな……あれっ?
音楽室の方からピアノの音が聞こえる。
「ピアノの怪談かもしれないよ! 行ってみよう!」
僕達は走って音楽室に向かった。
音楽室には誰もいなかったが、ピアノの音が聞こえている!
だ、誰もいないのにピアノの音が聞こえている!
「本当に七不思議がおきた! 凄いねテプちゃん」
「そんな事言ってないで逃げようよ!」
「もう遅いですよ! 怪異を見ちゃたんですよ僕達は!」
「駄目だぁ。助けてママぁあああ!」
急いで教室からでようとしたら人影に行く手を遮られた。
「ぎゃああああっ!」
「どうしたの? 下校時間を過ぎてますよ」
ん、下校時間?
僕達のゆく手を遮ったのは先生だった。
「それより逃げないと危険だよ先生」
「ピアノが勝手に……」
「大丈夫だよ! わたしが焼き払ってあげるから!」
「あぁ、トイレ急いでたから切り忘れていたみたいね」
先生がピアノの奥に置いてあったキーボードのボタンを押すと、ピアノの演奏が止まった。
「あの先生? 今のは何ですか?」
「自動演奏よ。鍵盤が光ってるでしょ。次に抑える鍵盤が分かるから練習するのに便利なのよね。ほらっ」
先生がボタンを押すと鍵盤が光り演奏が始まった。
なんだぁ、七不思議じゃなかったのか。
ビックリして損をしたよ。
僕達はそのまま下校する事にした。
準備不足だとこんなものかな。
本気で七不思議を調べるなら、事前調査しておく必要があるね。
二度と調べないけどね!!




