表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

86/149

第86話 切り札はテプちゃん

「しず子! 今こそ俺様達の力を見せつける時だぜ! いっくぜー!」


 しず子さんの肩に乗ってたオハコが神獣モードに変化した。


「分かったわよオハコ! 新魔法! (いや)しの水500mLペットボトル入り!!」


 しず子さんが魔法のステッキ振ると、癒しの水が入ったペットボトルが沢山出て来た。

 えっ、魔法の力でペットボトルを生み出したの?!

 普通はパワーアップしたら、回復効果が上がったりするよね?

 う~ん……よく考えたら回復効果が上がっても意味ないか。

 元々死にかけの人が一瞬で復活するだけの効果があるからね。

 よく考えたら、ペットボトル入りになって持ち運べるのは凄い進化だよね。

 もう、びしょ濡れにならなくて済むからね。


「増子も頑張れや~。ほいっと。聖獣モードぉ~」


 プレナが聖獣モードに変化すると、増子さんの魔法服が銀色に輝き出した。


「体力マシマシでジャスティース! これが魔法の力だ! どうぞ、怪我したら飲んで下さいね」


 増子さんが(いや)しの水500mLを配り始めた。

 今日も増子さんは元気だなぁ~。

 あんまり魔法関係ないって言ったら怒られそうだけど……


「回復の準備か。戦闘準備と判断しても構わないかね?」

「構わないわよ。私は最初から倒すつもりだったからね」

「僕も頑張るぞ! 僕の拳は痛いぞ!」

「まさか、拳で戦うとは言わないだろうな?」

「殴るに決まってるでしょ! ろくでなしは殴るって決めてるの!」

「僕は蹴りも使うぞ!」

「愚かな……」


 しず子さんと増子さんが大賢者アクイアス・セッテ目掛けて走った。

 だがクマの鉱魔(こうま)が行く手を(さえぎ)った。

 二人の拳がクマの鉱魔に直撃したがビクともしない。


「やれ、アクアオーラ」

「分かりました。ウォーター・チェーン!」


 水の鎖がしず子さんと増子さんを拘束した。


「くっ、離せ!」

「こんな魔法なんかに負けるか!」

「無駄だ。止めを刺せエンジェルオーラ」

「了解です。ジャジメント・カッター」


 光の刃がしず子さんと増子さん目掛けて飛んできた。

 危ない……と思ったが、光の障壁(しょうへき)が光の刃を防いだ。

 この光は燐火(りんか)ちゃんの魔法発動時に発生する魔力結界だ!


 シルクのドレスの如き優雅(ゆうが)な花弁よ

 幾重(いくえ)にも重なり我を守れ

 魅力に満ちた八重咲(やえざき)の花!


「立ち塞がれ! 金 鳳 劫 火(ラナンキュラス)!」


 シルクのような優雅な炎の花弁が僕達を包んだ。

 触れたもの全てを灰燼にする防御魔法金 鳳 劫 火(ラナンキュラス)だ。

 これでしばらくは安全だ。


「攻撃を止めよ」


 大賢者が追撃しようとしていた鉱魔と魔法少女を止めた。

 初見なのに触れたら危険だって見抜いたようだ。

 大賢者を名乗るだけの事はある。


「なるほど。これは原始の炎。神から与えられた最初の力だな。これは面白い。私の最新の魔法科学と対をなす存在といえるからね。さて、どうする小さな魔法使い」

「ちいさな魔法使いじゃないよ。私は大魔魔導士。全ての立ち塞がる敵を焼き払うものだよ!」


 あれっ、いつもより頼りない気がする。

 よく見ると少し震えていた。

 燐火(りんか)ちゃんが怖がっている?

 どうしてだろう?


「大賢者をやっつけよう! 燐火(りんか)ちゃんの魔法なら一撃だよ」

「無理だよテプちゃん。敵を倒せる魔法がない」

「なんで? 鉱魔なんて燐火(りんか)ちゃんの最強魔法で一発だと思うけど?」

「ここが何処だか分かってる?」


 燐火(りんか)ちゃんに言われて思い出した。

 僕達は小学校にいるのだ。

 燐火(りんか)ちゃんの最強魔法紅 蓮 躑 躅(ロードデンドロン)なら全てを焼き尽くせる。

 校内に残っている生徒ごと……

 当然の事だけど、そんな事は出来ない。

 そうだ!


燐火(りんか)ちゃん、連携魔法で行こう! 炎 剣 菖 蒲(グラジオラス)珊 瑚 刺 火(コーラルツリー)を連続で使うんだよ」

「無理だよ。それだけだと鉱魔しか倒せない。相手の魔法少女さんの攻撃で負けるよ」

「そ、そんな……」


 もう勝ち目がないじゃないか。

 援軍は期待出来ない。

 体力が劣る僕達が先にギブアップする事になるよね。

 誰か助けてくれないかなぁ。


「助けてよ……」


 燐火(りんか)ちゃんが(つぶや)いた。

 そうだよね。

 燐火(りんか)ちゃんも助けが来て欲しいと思うよね。


「助けてよテプちゃん」

「えっ、僕?」


 思わず叫んでしまった。

 何でこの状況で僕が役に立つと思ったの?

 ムリだよね?


「大丈夫だよテプちゃん。今こそ四天王になって手に入れた力を見せる時だよ!」

「えええっ! その設定有効なの?!」


 困った……。

 燐火(りんか)ちゃんが魔王軍に入って力を得た設定を信じちゃってるよ。

 こんなピンチの時に言われても困るよ。


「そんな妖精如きに何が出来る? こんなものにすがるとは哀れだな。これが子供の限界だ」


 腹が立付けど大賢者の言う通りだよ。

 僕に出来るのは頭が三つに増えて、頭だけがデカくなる芸当だけだよ。

 強い魔獣のケルベロスじゃなくて、まがい物のテプベロスだよ。


「ここはテプちゃんに任せるしかないみたいね」

「頑張れテプちゃん。主役は君だ!」

「変身出来ない俺の代わりに戦ってくれ!」

「私の計算では敗北必至。それでも信じています!」

「信じているわよ。一緒に戦った貴方の事を!」


 いつの間にか復活した、しず子さん、増子さん、星七(せいな)さん、亜夕美(あゆみ)さん、蒼羽(あおは)さんの5人が声援を送ってきた。

 困ったなぁ~。

 僕はみんなを救うような役割じゃないと思うんだけど……

 うつ向くと纏蝶(てんちょう)さんに貰った指輪が目に入った。

 そういえば魔獣に変身出来るんだった。

 無駄だと思うけど変身してみようかな。

 パワーダウンするだけだけど、何もしないよりマシだよね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ