第84話 大賢者登場
謎の追放劇から一週間。
僕達は新たに4個の鉱魔のコアを入手した。
これで僕達が持っているコアの数は合計6個。
新たに現れた魔法少女達の攻撃魔法は脅威であったが、鉱魔を倒す事に関しては蒼羽さんの方が手際が良かったから、出現した鉱魔のコアは全て回収している。
コアを手に入れられなくなった大賢者アクイアス・セッテが痺れを切らすだろう。
次の土曜日に、みんなで誘き寄せよう!
今日は燐火ちゃんと一緒に学校に行くのだー!
いつもの様にロッカーの上で授業を見学した後、燐火ちゃんと一緒に下校しようとした。
だが、校舎を出て直ぐに燐火ちゃんが立ち止まった。
前方を見ると大賢者の魔法少女、コスモオーラ、アクアオーラ、エンジェルオーラの三人が校庭に立っていた。
そして、その後ろには白衣を着た中年男性が立っている。
このメンバーと共にいるとい言う事は、あの男性が大賢者アクイアス・セッテなのだろう。
そ、想像と違っている……
大賢者っていうから、白髪でローブを着ている姿を想像していたよ。
杖を持っていないけど魔法を使えるのかな?
いけない。
僕はぶんぶん首を振った。
余計な事を考えている場合ではない。
まだ学校内に他の生徒がいるのに敵が現れたのだ。
陽翔お兄さんの言う通りであれば、関係ない生徒にも危害を加えるかもしれないのだ。
大賢者アクイアス・セッテはともかく、魔法少女の三人は攻撃魔法が使えるのだ。
「燐火ちゃん、いつでも金 鳳 劫 火を使えるように準備しておいて」
「分かったよテプちゃん。防御は任せて! 敵の相手はテプちゃんに任せるよ。お毛並み拝見だね」
「お毛並みじゃなくて、お手並みだよ。えいっ!」
僕は陽翔お兄さんから貰った魔力玉を目の前の地面に投げつけた。
「おやおや。いきなり攻撃してきたと思ったら、期待外れでしたねぇ。私の元に届かず、込められた魔力も低い。その程度の実力で、よく鉱魔を捕獲出来ましたねぇ。今回の魔法少女はかなり強くしておいたのだが……この程度の相手に後れをとるという事は、今回も失敗作という事なのかもしれないですねぇ。前の作品と同様にね」
失敗作?!
目の前の魔法少女達が?
そして蒼羽さん達もだって!
許せない!
「大賢者アクイアス・セッテですね。貴方を倒して紅鳶町を守ってみせる!」
「大した力もない妖精風情が大口を叩くか。やれ、アレを排除してコアを入手するのだ」
アクイアス・セッテが三人の魔法少女達に攻撃の指示を出した。
他の生徒は燐火ちゃんが守ってくれると思うけど、僕自身は自分の力で逃げるしかない。
「ウォーター・チェーン!」
「ジャッジメント・カッター!」
アクアオーラが振り回す水の鎖と、エンジェルオーラが放つ光の刃を走ってかわした。
よしっ、これが燐火ちゃんと特訓をした成果だ!
「そんなの当たらないよ~」
追いかけてくるコスモオーラの拳も華麗に避け続ける。
やれる!
僕だって!
「少しは頭を使え! 手あたり次第に攻撃しろ。逃げ場が無くなるまで攻撃魔法を放つんだよ!」
何て事を言うの?!
そんな事をしたら学校が壊れちゃうよ!
「そこまでよ! 輝けオーラクリスタル! 希望の戦士! エンジェルオーラ参上!」
「蒼羽だけにカッコつけさせないぜ! 輝けオーラクリスタル! 癒しの戦士! コスモオーラ参上!」
「輝けオーラクリスタル! 智慧の戦士! アクアオーラ参上! そういう問題ではありませんよ星七。貴方は子供たちを守って下さい」
駆けつけた蒼羽さん達3人が、僕の目の前で変身をした。
「蒼羽さん、亜夕美さん、星七さん、助けに来てくれたんですね」
「当然よ。信じたくなかったけど、本当に大賢者が襲ってくるとはね」
「どの様な大義を掲げても、小学校を襲撃した時点で悪です」
「何で俺が最後なんだよ! 一番最初に俺の名前を呼べって!」
「星七は黙って下さい」
「そうね。その方が星七の為だと思うわよ」
「おまえら~」
ふふっ。
思わず笑みがこぼれる。
頼もしい仲間の登場で安心したからかな。
「ジャッジメント・カッター!」
敵のエンジェルオーラが蒼羽さん達に光の刃を放った。
「私に任せて下さい。ウォーターウイップ!」
亜夕美さんが攻撃魔法で光の刃を防ごうとしたが……
攻撃が当たる前に蒼羽さん達が膝をついた。
どうして?!
何で変身が解けているの?!
光の刃が三人を吹き飛ばした。
そして、アクアオーラのウォーター・チェーンで縛り上げられてしまった。
「馬鹿だね君たち。そいつらの力は私が作ったものだよ」
地面に転がる蒼羽さん達の周囲に光を失ったオーラクリスタルが転がっていた。
「魔法の変身アイテムが力を失っている……」
「魔法の変身アイテム? 違いますよ。それはただの人工物です。言ったでしょ、私が作ったと。まがい物の魔法少女にお似合いの無様な姿ですね」
「ふざけるな! 何でこんな事をするんだ!」
「良いですよ。教えて差し上げても」
「何で?」
「自分達のやってきた事の本当の意味を知った方が、より悔しい思いをするからですよ? さぁ、攻撃を止めるから楽しんでくれたまえ」
大賢者アクイアス・セッテが配下の魔法少女達を下がらせた。
このまま話を聞いたら、賢者に従っていた蒼羽さん達は傷つくのだろう。
でも、鉱魔とは何か?
コアを集める本当の理由は何か?
どうしても知っておきたかった。
ゴメン蒼羽さん、僕は大賢者の話を聞くよ。
「聞かせてもらうよ」
僕は話を聞く為、大賢者の前に座った。




