第83話 追放されたテプちゃん
今日から蒼羽さんが鉱魔を倒して、僕達が鉱魔のコアを守るのだ。
責任重大だけど頑張らないとね!
「おはよう燐火ちゃん、今日も頑張ろうね!」
「ねぇ、テプちゃん」
燐火ちゃんが怖い顔をしている。
どうしたのだろう?
機嫌が悪いのかな?
「どうしたの燐火ちゃん?」
「テプちゃんは冥王軍に必要ないんだよ」
「えっ?!」
「テプちゃんを追放する!」
「どういう事ぉー。仲直りしようよ燐火ちゃん」
「ほらっ、早く出て行って!」
ええええっ!
僕何かやっちゃった?
良く分からないけど追い出すのをやめてくれないから、いったん外に出てほとぼりが冷めるのを待とう。
時間が経てば仲直り出来ると思う。
行く所がないので商店街をとぼとぼ歩いていると、しず子さんとオハコ歩いていた。
「しず子さん、おはようございます!」
「あ~え~、何で~話しかけて来た~の~」
しず子さんが無表情で答えた。
いつもと様子が違うなぁ。
「何で変な話し方してるのですか?」
「そんな事も分からないのか? テプが追放されたからだ。追放された奴と話しちゃいけないんだぜ」
オハコが偉そう言った。
「追放ってどういう意味?」
「燐火ちゃんに言われてるだろ? 追放って言ったら追放なんだよ。意味なんて知るか!」
「オハコは意味を知らないのに追放って言ってるの?」
「べ、別にいいだろ! 追放は追放なんだよ!」
オハコが怒って走っていってしまった……
「ごめんねテプちゃん。燐火ちゃんとの約束だから~」
しず子さんまで立ち去って行った。
これは一大事だ。
今日たまたま機嫌が悪いだけかと思ってたけど、燐火ちゃんは本気で僕を追放するつもりみたいだ。
あと相談出来るのは増子さんと芽衣子ちゃんだけだ。
僕は公園で時間をつぶした。
午後になり、鉱魔を探していると、蒼羽さん達が川辺で戦っているのが見えた。
増子さんと芽衣子ちゃんも一緒にいる!
「増子さん、芽衣子ちゃん、お疲れ様です」
「今までお疲れ様」
「お疲れ!」
増子さんはいつも通りだけど、芽衣子ちゃんの冷たい眼差しが怖い。
「今までってどういう意味かなぁ~」
「分かっているでしょ? 冥王軍に役立たずは不要なのだー!」
役立たず?!
ハッキリ言われてショックだよ!
「僕はそういうの良くないと思うぞ。テプちゃんが可哀そうだよ」
「増子さん、甘やかしてはダメですよ。冥王軍は実力主義。能力が足りない者など不要なのだよ。クハハハハッ!」
芽衣子ちゃんが高笑いをした。
実力主義か……だったら!
「僕頑張るよ! 実力は見せてないけど、前より強くなったんだよ!」
「無駄ですよ。役立たずが成長しても役立たずのままなのだ。さぁ、出ていくのだ!」
芽衣子ちゃんがズバッと右手を突き出して言った。
たぶん今回の騒動の犯人は芽衣子ちゃんなのだろう。
何がしたいのだろう?
冥王だから悪役風に追放したかった?
理由は分からないけど、僕の話を聞いてくれなさそうだな。
「プレナイト・コア回収完了!」
蒼羽さんが鉱魔を倒した。
僕がいなくても活動は順調みたいだね。
蒼羽さん達に相談……は出来ないなぁ。
追放されたなんて相談したら蒼羽さんが激昂しそうなんだよね。
追放されたのは悲しいけど、事を荒立てたくはないんだよね。
燐火ちゃんの家には帰れないから公園に行こう。
公園についてベンチの上でぼーっとしていると声をかけられた。
「何をしているテプ? 休憩中か?」
顔を上げると魔王さんだった。
「実は……」
僕は今までのいきさつを説明した。
「なるほど。追放されて仲直りが出来ないという事か」
「その通りなんですよ。酷いですよね……急に役立たずだなんて……」
「気にするな。そういうのが流行っているだけだ」
「流行っている?」
「そうだ。だから仲直りの方法も知っている。仲直りの呪文を教えるから忘れるなよ。仲直りの呪文はーー」
僕は魔王さんが言った仲直りの呪文を聞いて驚いた。
これの何処が仲直りの呪文?!
逆に怒らせるのではないだろうか……
「大丈夫なんですか? 燐火ちゃんが怒りそうだけど……」
「安心しろ。古代より追放者を受け入れて来た我を信じるのだ。今日からテプは31人目の四天王だ」
「31人目の四天王ってなんだろう……4人だから四天王じゃないんですか?」
「四天王はブランドだから何人いても構わないのだ。商店街にある世界一うまいラーメン店は全国に100店舗以上あるチェーン店だ。世界一が100以上あるよりマシだと思わないか?」
「そ、そういうものなのかな……」
「騙されて行ってみるがよい」
「騙されたら駄目でしょ。はぁ、他に手段がないから、やってみますよ」
「頑張れよテプ」
僕は魔王さんと別れて燐火ちゃんに会いに行った。
「テプちゃん、何で戻って来たの?」
「ぼ、僕は魔王軍の一員になったのだー。しかも魔王様のお陰で秘められた能力に覚醒したから31人目の四天王に抜擢されたんだぞー。今更戻ってきて欲しくても帰らないからね! ざまぁ!!」
僕は魔王さんに言われた通り言った。
こ、これで本当に仲直り出来るのかあなぁ……
「芽衣子ちゃんが言った通りだぁ! テプちゃんがパワーアップした!」
燐火ちゃんが僕を抱えてほおずりしている。
ナニコレ?!
「良く分からないけど戻っても良いのかなぁ」
「大歓迎だよ! 一緒に大賢者を倒そう!」
はぁ、今日は疲れたな。
色々文句を言いたいけど、燐火ちゃんが喜んでいるから黙る事にした。
今度こそ本当に大賢者との決戦が始まってくれるかなぁ……




