第72話 滅せよ!
バルンシーさんの戦闘音楽で気分はラストバトル!
少し不安だけど纏蝶さんから貰ったアイテムで一応パワーアップしてると思う。
あとは最終決戦だけだ!
僕は燐火ちゃんと一緒に最後まで戦うよ!
「さぁ、かかってこい! 鉱魔のボス!!」
「テプちゃん、おいていくよ」
「ま、待ってよ燐火ちゃん!」
気合十分だったけど、僕達が向かうのは最終決戦の場ではなく小学校なのだ。
こちらの都合に合わせて敵は出て来てくれないのだ。
ゲームならボスの居場所が分かっているから戦いに行けばよいのにね。
現実だと、どこに向かえば敵と戦えるのか分からないよね。
はぁ……そろそろ追いかけないと本当においていかれるよ。
僕は必死に走って燐火ちゃんを追いかけた。
登校後、僕はいつも通りロッカーの上で授業を眺めていた。
まったり出来るのが魔法少女の相棒になる醍醐味なんだよなぁ。
魔法王国にいたら、僕達も学校に行かないといけないからね。
魔法少女に変身させるだけの魔力が必要だから、結局成績優秀じゃないと魔法少女の相棒になれないんだけどね。
成績不振のプレナが選ばれた時はビックリしたなぁ。
結局、変身させるので精一杯だったからね。
増子さんが変身するだけで満足してくれたからいいけど、燐火ちゃんなら纏蝶さんにあげちゃいそうだな。
最初に出会った時は大変だったからなぁ。
はぁ、今日は眠いなぁ……
「テプちゃん、帰るよ」
「う、う~ん。おはよう燐火ちゃん」
どうやら寝てしまっていたようだ。
「今日は喫茶店に行くよ。しず子さんに呼ばれたんだ」
「しず子さん? 敵対するのは止めたの?」
「止めてないよ。今日は冥王軍はお休みだから」
冥王軍ってお休み出来るんだ……自由過ぎるぞ冥王軍!
でも、しず子さんたちと仲が悪くないのは良い事だよね。
賢者アクイアス・セッテの魔法少女達との関係で敵対しているけど、僕達は大事な仲間だからね。
僕は燐火ちゃんと一緒に増子さんの実家である喫茶店に向かった。
店内に入るとしず子さんだけでなく、増子さんと陽翔お兄さんがいた。
陽翔お兄さんが一緒か……嫌な予感がする。
たぶん賢者アクイアス・セッテ関係の話だよね。
纏蝶さんと一緒に調査をしていたはずだから。
僕は陽翔お兄さんが何を言っても聞き逃さないように集中した。
「燐火ちゃんはアンガー・イラプションで良いよね?」
ずるっ。
思わず滑ってしまった。
アンガー・イラプションって何?!
燐火ちゃんは返事をして椅子に座った。
どうやらアンガー・イラプションを知っているようだ。
「どうぞ。燐火ちゃんが考えた新メニュー。アンガー・イラプションよ」
増子さんのママさんがかき氷を持ってきた。
なるほど、燐火ちゃんが考えたメニューだから物騒な名前なのね。
イチゴのかき氷に噴石に見立てたチョコの塊が沢山乗っかっている。
噴火した火山みたいで、火炎魔法が大好きな燐火ちゃんに似合っている。
「さて、そろそろ話を初めても良いかな?」
「私は既に1時間待っている。もったいぶらずに皆に説明しなさい」
「しず子さんは陽翔さんに厳しいな。幼なじみなんだからもっと仲良くしようよ」
「いいのよ。コイツは」
「ハイハイ分かりましたよ」
しず子さんは相変わらず陽翔お兄さんにはキツイ態度をとるなぁ。
陽翔お兄さんが少し寂しそうな顔をしているよ。
しず子さんは纏蝶さんが好きだけど、纏蝶さんは陽翔お兄さんとばかり一緒に行動している。
でも陽翔お兄さんは、しず子さんが好きに見えるんだよね。
仲良く出来るように何とかしてあげたいけど、僕には何も出来ないな。
大人しく待っていると陽翔お兄さんが手紙を取り出してテーブルの上に置いた。
「これを見てくれ」
「手紙? しず子さんは内容を知っているの?」
「先に読んだから知っているわよ。これはアイツからの……メッセージよ」
「開闢より受け継ぎし原始の力……」
「燐火ちゃん! 何で紅 蓮 躑 躅を使おうとしたの?!」
「だって、しず子さんが滅せよって言ったから」
「滅せよじゃなくてメッセージだよ! 全然違うからっ!」
「冗談だよ。愚者の杖無しで魔法は使えないよ。少しは緊張が解けた?」
「逆に緊張したよ!」
本当にびっくりしたよ!
冷静になれば愚者の杖を取り出していないから冗談だって分かるけどさ。
緊張状態でいきなり詠唱が始まったらビックリするよ!
「話を続けても良いかしら?」
「お、お願いします」
僕達では読めない漢字があるから、陽翔お兄さんが手紙を読んでくれた。
この世界は破滅に向かっている。
破滅を阻止出来るのは世界自身の力のみ。
世界の力を扱うには暴走する世界の力をコアに変換して制御するしかない。
それを成し遂げる事が出来るのは鉱物魔法を使える魔法少女だけ。
だから世界を愛する気持ちがあるなら、蒼羽さん達の活動を妨害しないで欲しいとの内容だった。
「僕は妨害なんて止めた方が良いと思うよ。僕達も魔法少女だからね」
「僕も増子さんと同じ思いかな。魔法少女同士で戦っても意味がないよね」
僕と増子さんは賢者アクイアス・セッテの手紙の内容に同意したけど、しず子さんと陽翔お兄さんは不満があるようだ。
二人には反対されるかな?
「わたしは戦うよ。同じ魔法少女じゃないから」
えっ、燐火ちゃん?!
燐火ちゃんが戦うと言い出すのは想定外だった。




