第68話 同窓会?
「燐火ちゃん、そろそろ降ろしてもらえるかな?」
「いいよ。テプちゃんの裏切り容疑が晴れたからから」
燐火ちゃんが僕を降ろしてくれた。
ふぅ、怖かったなぁ。
怒ったしず子さんの目の前に突き付けれて生きた心地がしなかったよ。
「何で僕の容疑なの? 僕は幹部じゃないから関係ないと思うけど」
「テプ君。幹部じゃないから関係あるんだよ。しっかり幹部を庇って犠牲にならないと駄目だよ」
「ええええええっ! 僕、そういう扱いなの?! 燐火ちゃんは違うよね? 僕は相棒だよね?」
「元相棒だよ。でも階級は絶対だからね。一般兵士のテプちゃんを甘やかしたら他の部下に示しがつかないんだよ」
「そうだよ。冥王軍は軍隊なんだから。テプ君も規律を守ってね」
「そんなぁ。他に部下はいないよね? もっと大切にしてよ!」
「陽翔お兄さんも部下だよ。テプちゃんより階級が上だからね」
「えっ、陽翔お兄さんも冥王軍になったの?! 階級は何?」
「委員長だよ」
い、委員長……
そんな階級聞いた事無いよ!
でも本格的な軍隊の階級を言われるより良いかな。
僕達は本当の軍隊ではないんだからね!
でも冥王軍の名に恥じないブラックな組織だなぁ。
ご近所に迷惑をかけないなら少し悪ぶるのも悪くないけど、僕も手下じゃなくて同じ扱いが良かったなぁ。
部下役がいないと冥王軍が成り立たないから仕方ないのかもしれないけどね。
「私たちは帰るわよ~。行きましょ増子さん」
「おう。元気でな燐火ちゃん!」
「またね! しず子さん、増子さん!」
しず子さん、増子さん、燐火ちゃん、芽衣子ちゃんの4人が手を振りながら帰っていった。
そう、帰ったのは4人。
僕はまだ帰らない。
何故なら、オハコが立ち塞がったからだ。
「どうしたのオハコ。しず子さんから離れるなんて珍しいね」
「話したい気分なんだ。テプとね」
「手短に頼むよ。俺っちは早く帰って寝たいからさ」
プレナが道端で寝ころんでいる。
「そんなところで寝てたら自転車に轢かれるよ。話があるなら公園で聞くよ」
「分かったよ。行くぞプレナ」
「めんどくさいなぁ。まぁ、帰り道だからいいけど~」
よし、そうと決まれば公園に直行だ!
僕達は公園に向かった。
「はぁ、こ、て、テプ……」
公園について直ぐ、オハコが息も絶え絶えに言った。
何で死にそうな声を出しているんだろう?
「どうしたのオハコ? 公園に来ただけなのに何でそんなに息が荒いの? プレナも変だと思うよね……あれっ! プレナがいない?!」
きょろきょろ周囲を見渡したがプレナの姿がない。
もしかして帰っちゃった?
それとも怠け者だからゆっくり来ているのかな?
「ばかにしてんのか! お前が置いていったんだろうが!」
「どうしたのオハコ? 何で怒っているの?」
「そんなに俺様に力の差を見せつけたいのか!」
「力の差? 見せつける? 僕が?」
「そうだよ! 何でそんなに速く走ったんだよ! いつの間に俺様より速くなった? 魔法王国アニマ・レグヌム最速の座は俺様のものだったはずだ」
「魔法王国アニマ・レグヌム最速の座かぁ……そんなものに意味なんてないんだよ、この世界ではね。僕ですら魔法でずるをしてギリギリ追いかけられる程度の実力でしかないんだから」
「意味わかんねぇよ!」
オハコが叫んだ。
僕も叫びたい気分だよ。
本当に意味分からないよ、燐火ちゃんの足の速さは。
燐火ちゃんと走る練習している時の僕は、今のオハコと同じ気持ちだったよ。
「今は分からないと思う。だけど燐火ちゃんの運動会に来てくれれば分かるさ……」
僕は夕日を眺めながら言った。
「もういいさ。本題に戻すぞ。俺様はどうすればいい?」
「えっ、何を?」
「とぼけるなテプ。お前はしず子の過去を知っているだろう? 俺は過去の事なんて忘れて楽しく魔法少女をやって欲しいんだよ!」
「悔しいけど無理じゃないかなぁ」
「何だとテプ! どういう意味だ!」
「大人になると色々あるってパパが言ってたよ。辛い事も沢山あるけど、一つ一つ自分で乗り越えないといけないんだって。しず子さんも今回の一件は自分で乗り越えないといけないと思うよ」
「しず子が? 過去に一度経験しているのにか?」
「そうだよ。でもしず子さんは自分の力で乗り越えていないよね?」
「そんな事はない! 辛い思いを乗り越えて頑張ってるじゃねぇか!」
「違うよ。辛い思いを抱えて我慢しているだけだよ。辛さを乗り越えて未来を勝ち取ったのは纏蝶さんだよね?」
「纏蝶だって……あの物の怪筋肉蝶野郎が?」
酷い言われ方してるな纏蝶さん。
凄い人だとおもうんだけどなぁ。
外観は別の意味で凄いけど……
「見守ってあげればいいんじゃないかなぁ~。何か特別な事が出来なくても、一緒にいるだけでも少しは安心出来るよ」
気が付いたらプレナが隣に座っていた。
いつの間に追いついて来たのだろう?
「おいっ、プレナは元々何も出来ないだろ?」
「そうだよ。俺っちは元々何も出来ないよ。だからこそ分かる。ただ傍にいるだけしか出来なくても意味があるってね」
「大丈夫だよオハコ。今のしず子さんにはオハコがいる。もう無力じゃない。オハコが力を与えた、癒しの力を持った魔法少女なんだよ」
「ありがとよテプ、プレナ。少しは気が晴れた」
「せっかくだから魔法王国の同窓会を始めようか」
「眠たいけど付き合うよ。久しぶりに三人で集まったからね」
「何言ってんだよ。俺様達、まだ卒業してないだろ?」
「そうだったね」
僕たちは三人で笑い合った。
敵は凶悪な存在かもしれない。
だけどなんとかなるさ!
僕達は一人じゃないから。




