第65話 燐火ちゃんと走る
しず子さん達が帰った後、僕達も帰宅した。
ふぅ、やっと休めそうだな。
僕は押し入れの自室でくつろいだ。
蒼羽さん達は鉱魔をコアにして賢者へ届ける事を諦めそうもない。
しず子さん達はそれを止めて賢者を呼び出そうとしている。
そして僕達は二組の魔法少女達を妨害して更に混乱させている。
う~ん、考えるまでもなく蒼羽さん達が一番まともだよね。
このまま燐火ちゃんと一緒に蒼羽達を妨害してよいのだろうか?
毎回悩むけど、蒼羽さん達を手伝って、早く鉱魔がいなくなってくれた方が紅鳶町にとって良いと思うんだよね。
彼女たちが鉱魔と戦うのは、僕達が魔女と戦うのと同じだからね。
所属は違っても、魔法少女の活動を妨害してはいけないよ。
よしっ、こうなったら僕が燐火ちゃんを説得するしかない。
僕は魔法少女をを導く妖精なんだからね。
さて、もう寝ようかな。
あしたは気合を入れて燐火ちゃんに立ち向かわないといけないからね。
僕は眠りについた。
翌朝、起きて直ぐに押し入れの扉を開けると、既に燐火ちゃんは起きてストレッチしていた。
「燐火ちゃん、今日の放課後は蒼羽達に協力して鉱魔と戦おう!」
「テプちゃん、何で鉱魔と戦わないといけないの?」
予想通りだけど、燐火ちゃんは蒼羽さん達に協力する事を拒んだ。
ここで引き下がったら僕の負けだ。
ぬ~ん。
僕は気合を入れた。
「燐火ちゃんが蒼羽さん達を良く思っていない事は分かっているよ。でも紅鳶町の平和を守る為には蒼羽さんの力が必要なんだ」
「やだ。今日は走りにいくから。テプちゃん、朝ごはんの時間だよ。先に行くね」
燐火ちゃんが部屋を出て行ってしまった。
えっ、走りに行く?
僕は慌て燐火ちゃんを追いかけた。
何で走りに行くのだろう?
疑問に思ったが食事中はおしゃべりしない主義なのだ。
ママさんが作ってくれた朝食をもぐもぐ食べた。
朝食後、燐火ちゃんと一緒に玄関を出た。
「行ってきます!」
そう言った直後、燐火ちゃんが走り出した。
えっ、今も走るの?!
登校中に話の続きをしようと思っていたから不意をつかれたよ。
慌てて燐火ちゃんを追いかけたが、初動が遅れた影響で追いつけない。
はぁはぁ……
追いつけないよ燐火ちゃん……
僕は途中で燐火ちゃんを見失ってしまった。
仕方がない。
僕は燐火ちゃんを追いかけるのを止めた。
追いかけなくても行き先は分かっているから大丈夫だよね。
ゆっくり歩いて小学校へ向かった。
「テプちゃん遅い。真面目に走らないと立派な妖精になれないよ」
「燐火ちゃんが速いだけだよ。僕だって最初は頑張ったんだから。何で今日は走ったの? 急に走り出すなんて変だよね?」
「忘れたの? 今月は運動会があるんだよ。頑張って走らないと駄目だよテプちゃん」
運動会?!
そういえば、そんな行事が今月あったけど……鉱魔はどうするの?!
学校も大事だけど、変な鉱物の魔物が街中を闊歩しているんだよ。
昨日あんなに芽衣子ちゃんと戦い方について盛り上がってたのに、何で急に運動会の準備に夢中なの?
「燐火ちゃん、何で急に運動会で頑張ろうと思ったの?」
「リレーのアンカーに選ばれたから元々頑張る予定だったよ」
「でも急すぎない? 昨日まで魔法少女同士の戦いに夢中だったのに」
「テプちゃん、メリハリが大事だよ。気持ちを切り替えないとダメだぞぉ~」
「でも大魔導士を目指すのに運動はいらないよね?」
「何言ってるのテプちゃん? 大魔導士だって運動は大事だよ」
「でも魔法使い系の職業って運動は苦手でしょ?」
「がっかりだよ……テプちゃんが職業差別をするなんて……」
職業差別?!
燐火ちゃんが遊んでいるゲームだって、魔法使いは体力系のステータス最弱だよね?
僕は間違った事は言っていないと思うけど?
「職業差別なんてしてないよ。魔法使いって運動苦手だよね? 燐火ちゃんが操作するゲームキャラも体力低かったよ」
「先入観で言ったらダメだよ。ゲームで魔法使いが運動出来ないのはゲームバランスの為だよ。現実の大魔導士は運動も得意なんだから」
「でも素早く動く大魔導士ってイメージ出来ないなぁ……」
「何で? 増子さんが好きな魔法少女アニメの主人公は運動能力高いでしょ? 大魔導士だって運動が得意でも変じゃないよね?」
そう言われれば変じゃない気がしてきた。
運動が得意な大魔導士って言われると、杖を突いたお爺さんが高速で動くのを想像していたから変なイメージだった。
でも魔法少女が運動得意なのは変ではない。
燐火ちゃんが運動が得意な魔法少女を目指すなら、僕が頑張って練習に協力しないとね!
朝は不意を付かれたが、僕だって飛行すれば早く動けるんだからね。
「分かったよ燐火ちゃん、放課後一緒に練習に行こう!」
僕はロッカーの上で授業が終わるのを待った。
放課後、僕達は予定通り走りに行った。
ビューン!
僕は勢いよく燐火ちゃんの前を飛行した。
どうだ! 早いだろ!!
燐火ちゃんが追いつくたびに勢いよく空を飛んで引き離した。
「燐火ちゃん、そろそろお家に帰ろうか?」
僕は魔力が尽きてきたので地面に降り立った。
「何言ってるのテプちゃん? あと4キロ走るんだよ」
「えっ、4キロ?!」
「マラソンの練習なんだから1キロじゃ練習にならないよ」
「マ、マラソンなんて聞いてないよ」
「全員参加のマラソンとリレーに参加するんだよ。永続魔法と速攻魔法みたいで楽しいよね!」
何それ!
僕は楽しくないよ!!
待ってよ燐火ちゃん、僕を置いていかないで……
燐火ちゃんを必死に追いかけたが、魔力切れで飛行できなくなったから追いつく事は出来なかった。




