表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/149

第60話 悪の魔法少女

「我の知識通りであったな。最初から我の言う事を聞いて捕まえておけばよかったのだ」


 全く活躍しなかった魔王さんがドヤ顔で言った。

 帯刀(たてわき)刑事が事件を起こそうとしたのは、今回の(さわ)ぎが原因だよね?

 最終的に犯人になっただけで、魔王さんが推理した時点では犯人じゃなかったと思うけど……

 でもこれで解決かな?

 帯刀(たてわき)刑事には申し訳ないけど……


「このクズ刑事が! 仲間が来たらお前を引き渡すから覚悟しろ! あとそこの一般人! お前に逮捕する権利はない! 私に引き渡せ!」


 明比(あけび)警部が帯刀(たてわき)刑事を拘束(こうそく)している怪盗ガウチョパンツに詰め寄った。


「その通りだ。私に逮捕する権利はない。でも拘束する。私は怪盗だからね。法律を守ると思うのかい?」

「ならお前も逮捕する!」


 明比(あけび)警部が(つか)みかかったが、怪盗ガウチョパンツが華麗にかわし、逆に明比(あけび)警部を押さえつけた。


「何をする!」

「大人しくしていてくれないかな? 言葉以外で大人しくする事も出来るけど、君程度に罪悪感を感じたくないのでね」


 怪盗ガウチョパンツが脅すと明比(あけび)警部が大人しくなった。

 今日の怪盗ガウチョパンツは強気だなぁ。

 少しカッコイイと思っちゃったよ!


「さて、犯人は拘束しましたので、みなさん解散しましょう」


 宿泊客たちが部屋に戻っていった。


「さて、我らも戻ろう。探偵ゴッコは面白かったな」

「魔王さんは余裕があって良いですな。私は撃たれるのが怖くて怯えていましたよ」

「いざとなったら魔王さんを盾にすれば良いだけですよ」

「良いアイデアだなテプ。一兆ドルマを越える衝撃でなかれば我を傷つける事は出来ないからな。フハハハハッ!」


 魔王様が高笑いした。

 一兆ドルマって何の単位?

 良く分からないけど強そうだなぁ。

 さて、疲れてきたから眠ろうかな。

 僕達は部屋に戻ってふかふかの布団で眠った。

 翌日、警察の増援部隊が明比警部と帯刀刑事を捕まえていった。

 怪盗ガウチョパンツのダサい(ちょう)のマスクを見て怯えていたけど、何でだろう?

 色々事情を聴きたかったけど、帰りの予定があるから聞くのを止めた。

 僕達は条さんが運転する車で紅鳶(べにとび)町へ帰った。


「温泉旅行楽しかったです!」

「私もですよ。誘ってくれてありがとうございます魔王さん」

「我も楽しかったぞ。また機会があったら旅行しよう」


 魔王さんが飛び去って行った。


「おじさんはレンタカーを返しに行くよ。さようならテプ殿」

「条さん、お疲れさまです!」


 僕は条さんと別れた後、燐火(りんか)ちゃんのお家に向かった。

 何だろう?

 大通りの方が騒がしい事に気付いた。

 駆け寄ってみると魔法少女達が戦っていた。


「このゾンビやろう! しつこいんだよ!!」

「私は倒れない! 勇気がある限り!!」

星七(せいな)、魔法で排除するわよ! ウォーター・ウイップ !」

「増子! (いや)しの水よ!」

「ふっかあああああつ!!!」


 な、なにしてるのおおおおお?!

 星七(せいな)さんと亜夕美(あゆみ)さんが増子さんを攻撃していた。

 増子さんはしず子さんの(いや)しの水で復活しているけど劣勢のようだ。

 何度も倒されながら復活を繰り返している。

 蒼羽(あおは)さんは後方で待機している。

 鉱魔(こうま)をコアに戻すチャンスを伺っているようだ。


「頑張れ魔法少女! 鉱魔(こうま)を倒してくれ! 悪の魔法少女の妨害(ぼうがい)に負けるな!」


 町の皆が星七(せいな)さん達を応援している。

 悪の魔法少女って誰?

 しず子さん達に向かって言っていた様に聞こえたけど……

 あっ、あれは燐火(りんか)ちゃんが倒したはずのクマの鉱魔。

 生きていたんだ!

 亜夕美(あゆみ)さんの水魔法でダメージを受けていたが、しず子さんが(いや)しの水をかけて回復させている。

 何でしず子さん達が鉱魔を守っているの?

 そういえば燐火(りんか)ちゃんは何処だろう?

 辺りを見渡したが燐火(りんか)ちゃんの姿は無かった。

 温泉旅行で事件に巻き込まれて大変だったけど、帰ってきたらもっと大変な事になっていたよ!

 あっ、鉱魔が逃げた!


「鉱魔が逃げたぞ! 止めろよ亜夕美(あゆみ)

「無茶言わないでよ! 攻撃魔法が使えるのは私だけなのよ。星七(せいな)があの女を止めてくれないと鉱魔に攻撃出来ないのよ」

「うるせぇ! もっと火力上げろよ! 拳じゃ倒れないんだよアイツ!」

「落ち着きなさい二人共。住民に被害(ひがい)が出ないなら深追いする必要はありません」


 戦いを続けようとする星七(せいな)さんと亜夕美(あゆみ)さんを蒼羽(あおは)さんが止めた。


(あきら)めなよ。僕は倒れないからね」

「賢者に伝えなさい。必ず抹殺(まっさつ)すると!!」

「それは言い過ぎだよしず子さん。僕達は世界を守る為に戦っているんだからさ」

「そうよ。だから賢者アクイアス・セッテは抹殺(まっさつ)する」

「そういう物騒(ぶっそう)な事は言わない約束だ」

「分かったわよ」


 えっ、しず子さんが怖い。

 僕が旅行に行っている間に何があったの?

 賢者アクイアス・セッテは何をしたんだろう?

 状況が飲み込めなくて混乱するよ!


「帰るわよ」

「待てよ蒼羽(あおは)

「仕方ないわね。今回は見逃すけど次はないからね」


 蒼羽(あおは)さん達がかえって言った。

 残されたしず子さん達もブーイングを浴びながら帰っていった。

 しず子さん達が完全に悪役になっている。

 僕は慌てて燐火(りんか)ちゃんの家に帰った。

 燐火(りんか)ちゃんの部屋に入ると、元気そうな姿で机の前に座っていた。

 無事で良かった!

 僕は(あわ)てて呼びかけた。


燐火(りんか)ちゃん! しず子さん達が悪の魔法少女扱いされていたけど理由を知ってる?」


 だが、僕の声は燐火(りんか)ちゃんに届かなかった。

 ゲームに夢中でヘッドホンをしていたからだ。

 燐火(りんか)ちゃん……いつも通りで何よりだよ……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ