第49話 しず子さんが怒る
喫茶店に着くと、しず子さんと増子さんが先に来ていた。
「しず子さん、増子さん、こんにちは」
「イチゴパフェ!」
燐火ちゃん、それは挨拶じゃないよ……
「お腹が空いたのかしら~。今日はお出かけ止めようかな?」
「イチゴパフェが食べたいんだな。任せろ!」
増子さんがママさんと一緒にイチゴパフェを用意してくれている間に着席した。
オハコとプレナは隣のテーブルで寝ていた。
「オハコとプレナは何で寝てるんだろう?」
「オハコは最近バトルが無くてつまらないから寝ちゃったのよ~。プレナちゃんはいつも通りだね~」
「二人共だらしないなぁ。僕達の本来の使命は人助けなのに」
「人助けなら私達がやるから大丈夫ですよ~」
「イチゴパフェ持ってきたぞ!」
「ありがとう増子おねえちゃん!」
燐火ちゃんが増子さんからイチゴパフェを受け取って食べ始めた。
「燐火ちゃんがイチゴパフェを食べ終わるまで待ちましょうね~」
「そうだな。みんなで出かけた方が楽しいからな」
「その前に二人に話したい事があるんだ」
僕は喫茶店に来る前に出会った魔法少女の事を二人に伝える事にした。
謎の敵……鉱魔。
あの3人の魔法少女が戦っているから、僕達が戦わなくても大丈夫だとは思う。
だけど、どこかで鉢合わせするかもしれないから情報は共有しておきたいのだ。
「何の話かな~?」
「真剣な話の様だな。聞かせてもらおうか」
「ここに来る前に、僕達が知らない魔法少女に出会ったんだ。そして鉱魔って名前の新しい敵と戦っていたんだよ」
僕はしず子さんと増子さんに今日の出来事を伝えた。
僕と燐火ちゃんが出会った3人の魔法少女。
回復の力を持つ魔法少女コスモオーラに変身する、青いジャージを着たポニーテールの星七さん。
水の攻撃魔法を使う魔法少女アクアオーラに変身する、セーラー服を来たショートカットの亜夕美さん。
鉱魔をコアに戻す魔法を使う魔法少女エンジェルオーラに変身する、お人形さんのようなドール系の服装の金髪で巻き髪の蒼羽さん。
そして、3人が戦っている鉱魔という謎の敵について説明した。
「鉱魔ですか~。名前だけだと可愛いく聞こえますね~」
「新たな敵、新たな魔法少女……燃えてきたああああ!」
「せっかく平和になったのに、聞いたことがない魔法少女に出番を奪われたのは悔しいよ」
「別にいいじゃない? 誰が戦っても平和になるなら」
「僕は一緒に戦ってみたいな。会えるかな?」
「大通りで戦っていたから会えると思うよ。紅鳶町で活動を始めたみたいだから」
「魔法少女の仲間として、あいさつはしっかりしましょうね~」
「おう、挨拶は大事だよな」
あいさつか……あの3人はあいさつを返してくれるかな?
あの3人は自分達が選ばれた存在だと思っているみたいだし、燐火ちゃんの事も馬鹿にしてたからね。
「あの人たちは仲間じゃないよ」
燐火ちゃん?!
イチゴパフェを食べ終えた燐火ちゃんが、魔法少女の3人を仲間じゃないと断定した。
最初から疑っていたけど、どういう事?!
魔王ですら敵視しない燐火ちゃんが、ハッキリと3人を敵視したので、しず子さんと増子さんが驚いている。
「燐火ちゃん、仲良くしないと駄目ですよ~」
「3人とも中学生なんだろ? 仲良くしてみようよ。僕達より年齢が近いから話が合うかもしれないだろ?」
「大賢者アクイアス・セッテに選ばれたって言ってたんだよ。大賢者なんて胡散臭いもん」
やっぱり大賢者が嫌いなだけなのね。
鉱魔から町の人たちを守っていたから、いい人なのは間違いないのに。
「なんて言った?」
ドスの効いた声が聞こえた。
しず子さんが怒っている?!
正当な理由もなく大賢者を馬鹿にしたから?
「大賢者さんに胡散臭いって言うのは失礼でしたよね~。燐火ちゃん、謝ろうか?」
「テプちゃんは黙ってて。燐火ちゃん、大賢者の名前を教えて?」
「アクイアス・セッテだよ」
「アクイアス・セッテ……セッテ……蒼真に確認する」
しず子さんが立ち上がり、寝ているオハコを抱えて喫茶店から出て行った。
どどどどうしよう?
大賢者アクイアス・セッテって何者?!
燐火ちゃんが大好きな大魔導士フラマ・グランデはゲームの登場人物だったけど、大賢者アクイアス・セッテは何系の人なんだろう?
「しず子お姉ちゃん行っちゃったね。やっぱり大賢者アクイアス・セッテは悪人だったんだよ」
「良く分からないけど、新しい魔法少女は敵なのか?」
「僕も良く分からないけど、敵ではないと思いますよ。鉱魔と戦っていたから」
「テプちゃんは甘いよ。水の攻撃魔法使いは、火の攻撃魔法より強いと思っているから敵なんだよ」
「それだとしず子さんも敵になっちゃうよ!」
「だいじょうぶだよ。回復魔法は対象外だから」
都合がいい解釈だなぁ……
そろそろお出かけしようかな。
実際に3人の魔法少女に会ったら、誤解は解けると思うから。
「しず子さんは帰っちゃったけど、僕達だけでお出かけしよう!」
僕たちは、しず子さん抜きで人助けに出かける事にした。




