第44話 散り行く深紅の花
空が暗くなった。
それが最後の戦いの始まりの合図だった。
ついに宇宙から魔女の始祖であるプロパガンダが降りて来たのだ。
紅鳶町の空を覆いつくすプロパガンダ。
僕達は紅鳶山の山頂で迎え撃つ事にした。
魔女が市街地に達する前に倒したかったからだ。
燐火ちゃんのパパさんの知り合いから借りたエピックマッスル金属工業株式会社製の2体のロボットは、攻撃魔法を使えないしず子さんと増子さんが乗ることになった。
これが最終決戦。
僕達が負けたら世界が終わる。
絶対に勝たないとね。
「燐火ちゃん、私達が守るから安心してね~」
「ぼさっとしてると俺様達が全部やっつけちまうぜ」
「僕も頑張るよ。えっとマニュアルは何処だ?」
「増子はボタンを押すな。俺っちがやるから壊すなよ」
しず子さんとオハコが乗ったA7110ナイトと増子さんとプレナが乗ったA834闇夜が飛び立った。
「燐火ちゃん、僕達も頑張ろうね」
「うん!」
燐火ちゃんが元気よく頷き、愚者の杖を具現化して、攻撃魔法を使う準備を始めた。
こちらの戦闘準備は完了だ!
空を見上げると、暗い紫色のアメーバの様な物体が覆っていた。
あれがプロパガンダ……不気味だなぁ。
攻撃するには、まだ距離が離れ過ぎているな。
僕達は徐々に降りてくるプロパガンダの様子を見守っていた。
あれ、止まった。
突然プロパガンダが動きを止め、アメーバの様な体から黒い種子のような物体が落ちて来た。
落ちて来た黒い種子が落下中に人の形に代わっていく。
これがプロパガンダが魔女を生み出す方法か……魔法王国アニマ・レグヌムに伝わる伝承と同じだな。
僕達を見つけた魔女の群れが接近してきた。
「テプちゃん、やっつけるよ!」
燐火ちゃんが愚者の杖を魔女の群れに向けながら詠唱を始めた。
猛獣の牙より鋭き劫火の牙よ
我に仇なす全ての敵を絡め取れ
出でよ! 樹木の如き生命の花!
「蹴散らせ! 珊 瑚 刺 火!!」
生み出された劫火の花弁が魔女の群れを貫いていったが、数が多くて倒しきれない。
連発したら少しは数を減らせそうだけどキリがない。
元凶のプロパガンダ本体を倒さないと、この戦いは終わらないだろう。
「ここは私達に任せてくれ!」
「俺っちも頑張るよ~」
増子さんとプレナが乗ったA834闇夜が銃とミサイルで攻撃を開始した。
「ここは通しませんよ~」
「俺様達が食い止めるから、早く止めを刺せよ!」
しず子さんとオハコが乗ったA7110ナイトが、鋼鉄の剣で落下してくる魔女を斬り裂いていく。
もはや魔法少女の戦いかたではないが、しず子さんと増子さんが時間を稼いでくれている間に決着をつける。
「燐火ちゃん、紅 蓮 躑 躅でやっつけよう!」
「うん、私の最強魔法を見せてあげるから!」
燐火ちゃんが愚者の杖を掲げて詠唱を始めた。
開闢より受け継ぎし原始の力
連綿と続く魔道史において 比類なき永遠の炎よ
我ここに示す
真なる炎を前にして 滅せぬものは存在せぬと
万物を構成せし五行の力をもって顕現せよ
燃え上がる恋のごとき灼熱の花
「咲き誇れ! 紅 蓮 躑 躅!!」
燐火ちゃんの詠唱が終わると同時に、空に五芒星が浮かび上がった。
そして五芒星の中心から五つの先端に向かって、炎の花弁が生まれた。
空に浮かび上がる深紅の炎で出来た躑躅。
燐火ちゃんの最強魔法紅 蓮 躑 躅がプロパガンダの中心に大穴を開けた。
だけど、それは一瞬の事だった。
プロパガンダの体から生み出された無数の腕が紅 蓮 躑 躅に襲い掛かった。
不気味な紫色の腕に掴みかかられ深紅の躑躅が散っていく……
存在そのものを燃やし尽くす神の炎でも魔女の始祖であるプロパガンダは倒せなかったのだ。
どうしよう?!
燐火ちゃんの最強魔法が通じなかったら、僕達にプロパガンダを倒す手段はない。
空を見上げると、プロパガンダから魔女の種がぼとり、ぼとりと落ち続けている。
しず子さんが乗ったA7110ナイトと増子さんが乗ったA834闇夜の二体が、生み出された魔女が地上に届く前に食い止めてくれているが、僕達が負けるのは時間の問題だ。
山頂に残っているのは僕と燐火ちゃんだけ。
もう逃げる事も戦う事も出来ないよね。
「う~ん、足りないな。あと4人いれば何とかなるんだけどなぁ」
燐火ちゃんが呟いた。
あと4人?
人数の問題じゃないと思うけど?
誰が来たらこの不利な状況を覆せるのだろう?
僕には分からないよ!!




