第43話 けんじん会
パパとの通信を終えた後、僕はオハコとプレナと交信して紅鳶町の危機を伝えた。
これで、しず子さんと増子さんにも伝わるだろう。
でも敵を攻撃出来る仲間が足りない。
しず子さんも増子さんも強い。
だけど、それは人間としての強さであって、人外の存在と戦えるものではない。
他に戦う人は怪盗ガウチョパンツがいるけど……呼ぶ意味なさそうだよね。
燐火ちゃんの力を信じているけど、一人だけに責任を負わせる事は出来ない。
「どうすればいいのかなぁ」
僕は思わず呟いた。
「何を悩んでいるの?」
燐火ちゃんが僕の顔を覗き込んだ。
心配させちゃったかな。
「攻撃出来る仲間が燐火ちゃん一人だけなのが心配なんだ。敵は強大だし、仲間も沢山引き連れているからね。燐火ちゃんの事を信じているけど、他に攻撃出来る仲間は欲しいよね」
「そうなんだ。だったらパパに相談しようよ」
「パパさん? パパさんは攻撃魔法の使い手を紹介出来るの?」
「大丈夫だと思うよ。賢人会のメンバーだって言ってたから」
賢人会?!
そんなのあるの?
初めて聞いたよ!
燐火ちゃんはパパさんを信じているんだね。
「いきなり魔女の始祖と戦うメンバーを探して欲しいって言って困らないかな?」
「いつでも相談して欲しいって言ってるから喜ぶと思うよ」
「そうなんだ。折角だから相談してみようかな」
僕は空返事をした。
燐火ちゃんの魔法が強力過ぎて分かり辛いけど、今まで出て来た魔女だって人知を超えているんだ。
この危機に対応出来る人を紹介する事は無理だと思うよ。
僕は期待せずにパパさんの帰りを待った。
*
夜になり、パパさんが帰って来た。
パパさんが夕食を食べ終わった後、居間のソファーに座ったので、僕はパパさんの隣に座った。
「燐火ちゃんのパパさん、相談があるのですけど」
「テプちゃんが相談するなんて珍しいね。やっぱり夕食はチモシーが良かったのかな?」
そんな事言ってないよ!
僕はウサギじゃないからチモシーなんて食べないから!!
はぁはぁ……
つい興奮してしまった。
いけない、本題を話さないと。
「燐火ちゃんに、パパさんが賢人会のメンバーだって聞いたので。賢人なら何でも知っているかなと思って相談しました」
「それは勘違いだよ。県人会ってのはね、紅鳶町に住んでいる僕の故郷の仲間の集まりの事だよ。燐火ちゃんはゲーム好きだから、賢者か何かと勘違いしていたのかな?」
なんだ……そういう事か……
そうだよね。
パパさんが特別な力を持っているハズないって、最初から分かっていたのにね。
「どうしたのかな? 期待ハズレだったかもしれないけど相談には乗るよ」
「こんど魔女の始祖のプロパガンダってのと戦うんだけど、攻撃出来る仲間が足りないの。誰かいないかな?」
僕の代わりに燐火ちゃんがパパさんに相談した。
えっ、何の前置きも無しに魔女の始祖とか言っちゃうの?!
絶対伝わらないよね?
「魔女の始祖? 良く分からないけど、燐火は強い仲間が必要なのかな?」
「うん。出来るだけ強いのがいい」
「分かった。県人会の仲間に相談してみるよ」
「ありがとうパパ」
相談を終えた燐火ちゃんとパパさんがテレビを見ている。
パパの言う強いがどの程度か分からないけど、魔女には通用しないだろう。
仲間が増えるのは嬉しいけど、弱かったら犠牲者が増えるだけだ。
パパさんには申し訳ないけど、後で僕が断ろう。
*
二日後、パパさんに紅鳶町の郊外にある工場へつれてこられた。
会社名はエピックマッスル金属工業株式会社……何の会社ですか?
パパさんの同郷の人が社長の会社だって聞いてたけど想定外だね。
スキンヘッドで筋肉ムキムキの男性が駆け寄って来た。
この人が社長さんだろうか?
「よく来たな陸。要望の物を用意しておいたぜ!」
「ありがとう虎太郎。でもいいのかい、準備するのは大変だっただろう?」
「何言ってんだよ。燐火ちゃんがピンチなんだろ? 微力だが、この虎太郎様が手を貸すぜ! さぁ、新たな力が君たちを待っている!」
虎太郎さんに連れられて、第三工場と書かれた建屋まで連れてこられた。
どうせ、社長と同じ筋肉ムキムキの従業員が待っているのだろう。
そう思いながら、工場のシャッターが開くのを待った。
工場内は明りがついていなかった。
真っ暗だなぁ……うあっ。
突如、ライトアップされた。
明るさに慣れてくると、純白と漆黒のロボットが見えた。
えっ、ロボット?
「左の純白のロボットがA7110ナイト。格闘戦が得意なロボットだ。そして、右の漆黒の機体がA834闇夜。射撃戦が得意なロボットだ。両機とも我が社自慢のアポカリプスシリーズの最新作だ。この力で君たちが紅鳶町を守るのだ」
虎太郎さんが自信満々に言った。
なんだよそれええええっ!
何で普通の会社が戦闘用のロボットを作ってるの?!
しかもアポカリプスシリーズって何?
まだ沢山兵器を隠し持ってるの?
パパさんの同郷の人達怖いよ!
「ありがとう、虎太郎おじちゃん」
「どういたしまして、燐火ちゃん。壊れてもいいから自由に使ってくれ! ……戦闘データはクラウドで保管してるから」
虎太郎さんが最後にぼっそっと何か言った!
これって、助けてもらっているようで、実は実戦テストに協力させられているってオチですか?
僕達は魔女の始祖との決戦前に、何故か戦闘用ロボットを2体入手した。
敵は宇宙、仲間はロボット。
僕達妖精と魔法少女は何処へ向かっているのだろうーー




