表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/149

第42話 プロパガンダ

 隣町での戦いを終えて帰宅した僕はパパと話をする事にした。

 魔法王国と交信出来る場所は、妖精とゆかりがある場所だけだが、今回は燐火(りんか)ちゃんのお家で話をしようと思う。

 公園だと交信中に敵の襲撃を受けるかもしれないし、交信だと燐火(りんか)ちゃんが話に参加出来ないからだ。

 面倒だけど、僕は急いで通信用の魔法儀式の準備をした。


燐火(りんか)ちゃん、準備はいいかな?」

「大丈夫だよ。わたしは何もしなくていいんだよね?」

「何もしなくて大丈夫だよ。全部僕がやるから。いくよ!」


 僕は通信用の魔法陣を起動した。


『どうしたのだアルタロネクタネブ? 通信儀式を使うのは珍しいな。隣にいるのは魔法少女か?』

「魔法少女じゃないです。わたしは大魔導士だよ」

『大魔導士? どういう事だ?』


 燐火(りんか)ちゃ~ん!

 燐火(りんか)ちゃんが大魔導士と名乗ったのでパパが混乱している。

 そこは魔法少女って言ってよ。

 僕がパパに怒られるじゃないか!


「えっと、凄い魔法少女って事です! 最近のこっちの世界では流行っているんですよ……」

『そうなのか。私が魔法少女と活躍していたのは20年だからな。大分変っているのだろうな』


 そうだよ、本当に変わっているんだから!

 パパから聞いていた魔法少女の常識が全く通じないくらいにね!


「そんな事は置いておいて、教えて欲しい事があるんです」

『何かあったのか?』

「善行を積んで聖の気を集めているのに、紅鳶(べにとび)町に魔女が出現を続けています。しかも隣町に人間の異能者が潜伏(せんぷく)していて、紅鳶(べにとび)町を狙っています。何か心当たりがありますか?」

『隣町の件は分からない。だけど紅鳶(べにとび)町に魔女が出現する理由は分かっている。この前凶悪な魔女が現れたと聞いた後に調べたからな』

「何が分かったんですか?」


 僕はパパに問いかけた。

 燐火(りんか)ちゃんは僕の隣で黙って考え込んでいる。

 やっぱり燐火(りんか)ちゃんも気になるのかな?

 魔女が現れ続ける理由について。


『魔女が現れる理由は宇宙にある』

「宇宙?!」


 いきなり宇宙だって?

 話が飛躍し過ぎじゃないかな。

 宇宙人が魔女を呼び寄せているって言うの?


『驚くのも無理はないか。紅鳶(べにとび)町の(はる)か上空の宇宙空間に魔女がいる。宇宙にいるとは思わなかったのでな。探すのに時間がかかったよ』

「宇宙に魔女が? そんな魔女聞いた事ないですよ」

『プロパガンダ……そう言えば分かるだろう』


 プロパガンダ……昔話で伝えられる魔女の始祖。

 (はる)か昔に多くの妖精や魔法少女が戦って命を落としたという。

 最強の魔女が何故?

 プロパガンダが現れた理由は分からないが、魔女が生まれる理由は分かった。

 魔女とは魔の気が集まって出来た力が実体化して生まれる存在だ。

 そして実体化する時に融合した思念によって能力が変わる。

 獣に襲われる恐怖が魔獣の腕の魔女生み出したり、蜘蛛(くも)への恐れが蜘蛛(くも)の頭の魔女を生み出すのだ。

 だけどそれは魔法少女がいなかった場合の話。

 魔法少女が善行を積み、聖の気を集める事で魔の気を薄める。

 それだけで魔女の出現を抑えられる。

 プロパガンダを除いて……

 魔女の始祖であるプロパガンダは自ら魔の気を生み出し、魔女を生み出す事が出来るのだ。

 通常の魔女は人の負の感情を集めるのに、プロパガンダは逆に恐怖を生み出してばら(ばらま)くのだ。

 際限なく……

 今も宇宙で魔女を生み出して、眼下にある紅鳶(べにとび)町へ魔女を落としているのだろう。

 種を()くように。

 ぽとり、ぽとりと……


「パパ、どうすればいい?」

『逃げろ。魔法王国の王としては失格だとは思うが、息子のお前に死んで欲しくない』

「全員で戦えば勝てるよね?」

『無理だ。かつてプロパガンダと戦った神話時代の妖精は強大な攻撃魔法が使えた。だが、今の妖精はどうだ? 魔法少女を生み出すだけのマスコットキャラ同然だ。アルタロネクタネブ、どうやって攻撃するつもりだ?』


 僕は戦えない。

 だけど燐火(りんか)ちゃんなら!


燐火(りんか)ちゃん、一緒に頑張ろう! 僕達なら負けないよね!」

「うん、テプちゃんが本当のお父さんを見つかられる様に頑張るよ!」


 えっ、本当のお父さん?!

 目の前に映ってると思うけど?


「パパなら目の前にいるよね?」

「でも見た目が違うよ。王様ウサギじゃなくてチンチラだよね?」

「チンチラに似てるけど妖精だから! 僕達、魔法王国アニマ・レグヌムの妖精は、動物と違って魂によって姿が変わるんだよ。僕のママはフェネックに似てるし」

「そうなんだ。チンチラのお父さんとフェネックのお母さんからウサギのテプちゃんが生まれるんだね。悩んで損した」


 あーっ、そういう事でずっと悩んでいたのね。

 燐火(りんか)ちゃんは世界の危機が迫っているって理解しているのかな?


『魔法少女よ。アルタロネクタネブを連れて逃げてくれ』

「やだ!」

『何故だ? 死ぬかもしれないんだぞ?』

「パーティーの中で一番安全な所にいる魔導士が、一番に先に逃げちゃダメなんだよ!」

『何故宴会をするのだ? 意味が分からん』

「パパ、パーティーとは冒険を共にする仲間の事で、前衛を任される戦士系の職業と魔法を使う後衛で分担して戦うんですよ」

『なんだそれは。魔法少女と関係あるのか?』


 無いですよねー。

 燐火(りんか)ちゃんに教えられた僕は意味が分かるけど、パパたち魔法王国の住人には理解出来ないだろうな……

 僕には説明出来そうもないな。


「わたしが全部やっつけるから大丈夫だよ」

『何故言い切れる? たった一人で戦えるのか?』

「一人じゃないから。テプちゃんも一緒だよね」

「うん、僕も燐火(りんか)ちゃんと一緒に戦うよ」

『駄目だ。アルタロネーー』

「倒すから! どんな恐怖も悪意も一息で消し飛ぶ灰にする。それが火の力を(たまわ)った大魔導士の力だから」

『良く分からないが、私には止められないようだな……危なくなったら逃げるのだぞ』


 パパが僕達を止めるのを諦めた。

 心配してくれたパパには申し訳ないけど、これでいい。

 魔女の始祖プロパガンダを放置したら、健斗君達や(じょう)さんも死んでしまうかもしれない。

 僕達は逃げる事も負ける事も出来ないんだ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ