第39話 朝顔の観察日記
今日は燐火ちゃんが机の上に置かれた鉢に植えられた植物の絵を描いている。
僕は机の上にのって見物する事にした。
燐火ちゃんはイラストの練習をしているのかなぁ。
何度もつぼみの状態の同じ絵を描いている。
「燐火ちゃんはお絵描きが好きなのかな? 練習中?」
「いま忙しいから静かにしてて」
燐火ちゃんは僕の方を見ないで、ひたすら植物の絵を描き続けた。
そんなに夢中になるなんて珍しいな。
邪魔しちゃいけないよね。
僕が黙って見ていると、燐火ちゃんが沢山描いた絵にコメントを書き始めた。
7月21日 つぼみのままだった。
7月22日 今日もつぼみだった。
7月23日 やっぱりつぼみだった。
えっ、これって……観察日記?!
どうやら燐火ちゃんはサボっていた観察日記をまとめて書いていたようだ。
「燐火ちゃん、これって朝顔の観察日記?」
「そうだよ。良く分かったねテプちゃん」
「観察日記って毎日書かないの?」
「毎日書かないよ。だって変化が無くてつまらないんだもん」
「でも毎日書かないと溜まっちゃうよ。後でまとめて書く方が面倒でしょ?」
「そんな事ないよ。ほらっ、絵の方は連続して描いた方が上達が早いでしょ?」
燐火ちゃんが観察日記をペラペラめくりながら僕に見せた。
確かに徐々に絵はうまくなっているけどさ……
文章の方は後半になる程、書き方が雑になっているよ。
これは僕の出番かな。
燐火ちゃんが朝顔の観察日記を楽しく進められるようアドバイスしよう。
これも魔法少女のサポートをする妖精の役目だよね。
「燐火ちゃん、お花が咲いたら楽しく観察出来るかな?」
「うん、お花は好きだから咲いたら楽しいと思う」
「それなら僕に名案があるよ! お出かけしよう!」
僕は燐火ちゃんを連れて、しず子さんの所に向かった。
「あら~、どうしたのテプちゃん、燐火ちゃん。魔法少女の活動以外で遊びにくるのは珍しいわね」
「しず子さんの癒しの水を分けて欲しくて」
「どうしたの? 誰か怪我をしたのかな?」
「いえ、誰もケガしていないです。燐火ちゃんが育てている朝顔にあげたいんですよ」
「なんだって? 俺様のしず子の魔法を朝顔の水やりなんかに使うなよ!」
「オハコ、別にいいじゃない。私の癒しの水で朝顔が元気になるなら。はいっ」
しず子さんが癒しの水が入ったじょうろを燐火ちゃんに手渡した。
「しず子お姉ちゃん、ありがとうございます! テプちゃん、さっそく朝顔にお水をあげよう!」
「しず子さん、ありがとうございました!」
「またね~。朝顔さん元気になったら私にも教えてね?」
僕と燐火ちゃんはしず子さんと別れて自宅に戻った。
そして早速朝顔に癒しの水を与えると、朝顔のつぼみが開いて花が咲いた。
僕の想像通りだ!
しず子さんの癒しの水を与えれば、絶対花が咲くと思ってんだよね。
高速再生した動画みたいに花が咲いたのはビックリしたけどね。
「凄いよテプちゃん! 花が咲いた!」
「そうだね。花が咲いて良かったよ。これで楽しく観察出来るでしょ?」
「うん、毎日観察して書くよ!」
燐火ちゃんが喜んで観察日記を書き始めた。
これで安心だな。
僕は安心して押し入れのお部屋で休むことにしたーー
翌日。
目が覚めて押し入れから出ると、机の前で立ち尽くす燐火ちゃんがいた。
一体何が?!
僕は慌てて机の上に飛び乗り、燐火ちゃんの視線の先に何があるのか確認した。
あ、朝顔の花が散っている!!
昨日咲いていた綺麗な花は全てしぼんでおり、多くの花びらが落ちていた。
どどどどどうしよう?!
そうだ!
僕達には癒しの水がある!
「燐火ちゃん、癒しの水を使おう! 水やりは毎日が基本だからね!」
「分かったよテプちゃん」
燐火ちゃんが癒しの水をかけると再び花が咲いた。
「やったね燐火ちゃん。これで元通りだよ!」
「そうだね。また観察日記を書くよ!」
燐火ちゃんが観察日記を書き始めた。
よし、これで一安心……と思っていたのは間違いでした。
翌日、やっぱり朝顔の花はしぼんでいた。
再び癒しの水で花を復活させたけど、これは僕が想定していた事ではない。
いったい、いつまで繰り返せば良いのだろう……
終わりがない水やりに疲れ始めた。
そう言えば、観察日記はどうなったのだろう?
僕は気になって、机の上の観察日記を前足でペラペラめくった。
花が咲いた……しぼんだ……花が咲いた……しぼんだ……
ひたすら綺麗な花の絵としぼんだ絵が交互に描かれている。
これは何の観察日記なのだろう……
事情を知らない先生が見たら嘘の観察日記に見えるだろうな……
普通はしぼんだ花が復活する事はないからね。
ごめん! 燐火ちゃん!
全部僕が悪かったから、今から普通の観察日記を書こう!!




